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Last Update:2017/8/23
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第338回 アップルApp、独禁法違反で裁判

(2017年8月23日)

  2017年8月7日に中国国内のアプリ開発業者及び弁護士グロープは、アップルがアプリ配信サービス「アップストア」において市場独占をしているとの説明会を開催した(北京商報 2017年8月8日)。同時に彼らは、国家工商行政管理総局及び国家発展改革委員会に告発状を提出した。
  北京商報によると、例えば、中国法には違反していないにもかかわらず、ダウンロード支援ソフトやスマートフォールディング電動アシスト自転車の誘導用SIM カードの販売など、2016年8月から10月の間に3万件のアプリが突然にアップストア内から削除されたという。2017年6月には20日間で全アプリの4%に相当する8万9,205件のアプリが削除された。
  暁達律師事務所の林蔚・パートナー弁護士によると、アップルは開発者と交わした協議書の条項に基づきアプリを削除しているというが、条文は抽象的で手続きも不透明であるという。開発業者が問い合わせても明確な回答がなされていない由である。
  2017年6月10日にアップルは、新たな開発者条項として中国本土化イノベーション条項を設けた。しかし、この内容は、課金の決済方法を自社の「アップルペイ」に制限し、課金の30%はアップルの収入とするというものである。
  林蔚弁護士は、「アップルが中国国内に登録した会社はハードの販売が主目的であり、アップストアは中国に実体がなく、米国本社により運営されている。アップストア内のアプリ削除の判断基準も明らかでない。」と主張している。
  2016年第4四半期のアップルの市場占有率は18%であるが、全業界の利益の92%を得ている。それでも最近ではスマホ、パソコンなどハードの売れ行きが伸びないところ、アップストアからの収益率を上げようとしている。
  暁達律師事務所は、アップルは、市場における支配的地位を乱用し、(1)アプリ開発者のソフトを合理的理由を述べずに削除し、(2)中国企業の開発者を外国企業と差別待遇し、(3)消費者に抱き合わせ販売を強い、決済を「アップルペイ」に制限し、(4)App内課金の30%をアップルが取得する、などの問題を指摘している。
  以前、米国クアルコムがライセンス事業に関して、不当にロイヤリティーを得ているとして中国国家発展改革委員会に9.75億ドルの罰金を課されたことがあった。中国に企業実体を持っていない国外のインターネット・サービス業者は、事業の範囲、監督管理を受ける範囲について注意する必要がある。中国に正式に会社を設立することも必要になるだろう(林蔚弁護士は、訴えに際してかかる要求をしている。)。
  なお、上述のような問題があったときに、中国では容易に(訴訟)集団形成され、集団として行動する。中国企業対外国企業という構図が描かれる。ナショナリズムの強さがあるのかもしれない。

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