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Last Update:2017/8/9
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第337回 国有企業の海外投資管理を強化

(2017年8月9日)

  財政部が制定した「国有企業境外投資財務管理弁法」(財資[2017]24号)が2017年8月1日に施行された。
  この弁法の内容は、国有企業が、海外投資をする場合に企業の所有権関係および内部統制、経営自主権を尊重するという前提のもとで、以下のことについて規律することを求めるものである(なお、この海外投資の概念は、グリーンフィールド投資、M&A、株式取得などに方式により、海外の対象企業の所有権、支配権、経営管理兼及びその他権益を取得する行為をいう。)。
  具体的には、(1)海外投資を行うときの財務管理職責を明確にし、(2)事前の戦略決定について合理的なメカニズムを確立し、(3)事業運営中の財務管理を規律し、(4)財務監督を強化し、(5)投資効率・業績評価メカニズムを確立することを要請する。
  このような弁法を規定した背景には、中国企業の海外投資が所期の目的を達成しているとは言えないということにある。エネルギーその他資源確保を目的とした投資に関しては、生産の遅延などが著しく目立ち、投資回収ができていないものが多い。多くの企業が、事前調査をせずに、形式的なファージビリティ・スタディ(F/S)をするだけで、事業運営中の財務リスク管理力がないなどの問題を抱えているからである。
  中国企業には、国際コーポレート・プランニングの経験がなく、調査が不適切であると考える。通常、対外投資をしようとする場合、国際コーポレート・プランニングを定め、(A)環境アセスメントとして、@国別地域別の全般的・経済的・政治的・社会的展望、A現在の事業分野別分析、B技術動向と予測、C当該企業の事業分野以外の市場分析――多角化の可能性、D当該産業の世界的展望――コストと価格、(B)企業(事業部)アセスメントとして、@産業としてまた同業他社との対比における企業の強い点、弱い点の国別分析、A経営資源――財政、人など、B短期計画的視点からの評価、C長期実行計画の進展、などを行う。さらに、より具体的に投資環境リスクのチェックリストを作成し、@経済的要因、A政治的要因、B地理的要因、C労働上の要因、D税制上の要因、E事業上の要因などを極めて詳細に行う。このようなことがなされていない。
  董事長、総経理、監査役をはじめとして業界、財務、税務、法律、国際政治などに詳しい人材による事業計画チームを形成し、また外部のコンサルタントを使ってフィージビリティ・スタディを行うことなどを弁法は求めてゆく。
  今後、中国政府は、国有企業の投資分野を鉱物資源開発から高度な科学技術を有する製造業分野に転換してゆきたい考えである。このとき、海外投資に際しての国際コーポレート・プランニングの技法について学び、実践することが不可欠である。

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