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Last Update:2017/10/25
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第342回 国有企業改革はどうなる

(2017年10月25日)

  鞍鋼公司は、2017年10月12日に鞍鋼集団は中国石油天然ガス集団と戦略的協力を行うと発表した。戦略的協力とは、鞍鋼公司総の資本8.98%に相当するA株6.5億株を無償で中国石油天然ガス集団に供与するというものである。10月12日時点の株価で評価すると42.38億元になる。これ以前の9月13日に中国石油天然ガス集団は、同社の4.4億株を無償で鞍鋼集団に供与していた。これは当時の株価で35.07億元であった(証券日報 2017年10月14日)。
  2016年以来、国投集団、武鋼集団、誠通集団、宝鋼集団、中船集団、中国遠洋集団などの中央企業が株式持ち合いを行なって来ている。国有企業は、こうした株式持ち合いを通じて株式構造の優位化を図ろうとしている。この方式は、国有企業の新たな改革モデルであり、また、国有資産監督管理委員会が進める新しい国有企業管理方式となるものである。
  この方式には、以下の3つのメリットがあるという。第一に、(1)資本主導による改革を行うことで、国有資本の最適配分ができるようになり、国有資産監督管理委員会が資本を通じた国有企業管理を行いやすくすることができる。第二に、(2)中央企業全体の戦略の協力が強化され、安定した戦略同盟が構築される。第三に、(3)企業の株式構造の多様化が図られ、企業の経営管理に新しい管理理念及び管理モデルが生まれ、製品の競合がなくなり、無駄や非効率な同業者間の競争がなくなる。
  中国政府は、2003年に196社あった中央企業を現時点で98社と半数までに整理・統合し、さらに40社程度までに減らしたい意向である。これは、国有企業のコストが生産高く、製造業及び消費者の負担を高め、中国の商品の国際市場における競争力も弱めているという判断があるからである。
  しかし、このときに国有企業を保護するような方式で改革をすることには疑問を感じる。国有企業に主要な地位を占めさせ、民間企業を後退させる「国進民退」が適当であろうか。
  経済を活性化させるには、市場経済を進める方が有効である。国有企業を巨大化させ、保護するよりも、投資効率の良い民間企業をさらに強くする経済・金融政策の方がむしろ必要である。銀行の金利自由化を促し、銀行の自由意思で民間企業への融資を増やすことが必要である。
  そうであるのに国有資産監督管理委員会は、2017年9月28日にすべての中央企業は定款に党が経営判断に深く関わることを認める規定を導入したことを明らかにした。 日本経済新聞の調査では、中国本土で株式を上場する少なくとも288社が「重大な経営の決定事項では事前に社内の党組織の意見を優先的に聞く」などと定款に明記。国有企業も多く含まれる(日本経済新聞 2017年9月29日)。かかる規定がなくても国有企業のトップの人事権は中国共産党に握られているのだが、これはコーポレート・ガバナンスにおける根本的な欠陥である。

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