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(2018年2月14日)
2017年10月に国務院発展改革委員会は、「都市・農村住民の所得増のための総合的支援政策の試行並びにインセンティブ計画及び収入観測の試行に関する通知」を発布した。 この通知に関連して、2018年1月から(1)技術労働者、(2)ホームドクター、(3)教師、(4)新型職業農民の所得を重点的に増やそうという計画が始動した。この4つの職業の人材が不足しており、人材を育成するためにも所得が増えるようにしようというものである。 このうち、(1)技術労働者については、「技術労働者の待遇向上に関する意見」、(2)ホームドクターについては「ホームドクターの育成及び活用奨励システムを改革し完備することに関する意見」、(3)教師については、「新時代の教師隊伍の建設改革を全面的に進化させることに関する意見」が何れも2018年1月に発布されている。また、(4)新型職業農民については、2017年10月に「全国新型職業農民育成発展規画」が発布されていた。 「技術労働者」とは、一般のブルーカラーよりは専門的知識及び技能を有する者のことを言う。人力資源社会保障部によると、現在、中国の就業人口は7億7,600万人で、このうち技術労働者は1億6,500万人(さらに高級エンジニアは、このうち4,700万人しかいない。)で全就業人口の6%しかいない。技術労働者の求人倍率は1.5倍以上、高級エンジニアの求人倍率は2倍以上であり、供給が追いついていない状況である。しかし、技術労働者の収入が著しく低く、待遇も保証されていないところ、職業に対する誇りも達成感も得られていないという問題があると指摘されている。そこで、技術労働者の所得を、10%増やす計画が建てられている。 ホームドクターは、国家衛生計画委員会によると、2016年末までに20.9万人しかおらず、2020年までに30万人に増やすという目標に遠く及んでいない状況である。 教師は、中小学校の教師に対する待遇改善が中心であり、とりわけ農村における教師の待遇改善が要請される。また、高等学校の教員の報酬制度の改革も行われる予定である。 新型職業農民とは、現代的農業生産経営技能を有する農民のことを言う。農業部によると、現在、新型職業農民は1,400万人であるが、2020年までに2,000万人にまで増やしたい計画である。上述の技術労働者の中には、農民工もいるが、こうした農民工を農村に帰還させ、彼らの知識や技能をもって専業化、現代化された農業生産を創業させたいということもある。さらに、これによって農業の供給サイド改革を推進し、農村の振興を図り、農村住民の所得向上を図り、中間所得層を増やしたいというのが中国政府の意向である。 技術労働者、ホームドクター、教師、新型職業農民の所得を重点的に増やそうという計画の根底には、都市と農村の経済・所得格差の拡大ということがある。新型職業農民を育成することについては言うまでもないが、農村部には所得た待遇なの勤務条件の悪さからホームドクターや教師も勤務したがらないという事実がある。都市に居住する農民工技術労働者を農村に還したいという都市の思惑もある。都市・農村住民の所得増のための総合的支援政策試行並びにインセンティブ計画の実施動向に注目したい。
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