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(2005年11月24日執筆)
2004年の中国の対外直接投資は、55億ドル、累計448億ドルにのぼるという(商務部「2004年度中国対外直接投資統計公報」)。このうち、対日投資も2004年末までに累計で約1,000件、投資総額は90億ドルになったという。これらのうちには、日本人の名義を借りて実質的経営は中国人が行っているというものも含めてである(経済参考報 2005年9月30日)。 ハルビンで新潟県商談会が開催され、中国企業50社に対日投資意向調査をしたところ、15社が意欲を示したという。新潟県は、対日投資する企業には投資金額の30%までの補助金を交付するなどの優遇政策の供与を準備している。 中国企業の対日投資理由は、日本の技術の吸収、販売網の活用、日本の企業管理手法の吸収などがある。対日投資方式としては、合弁、買収などが主なようだが、これは単独で企業を設立するよりは遥かに効率的に上記目的がかなえられるからである。 しかし、対日投資する中国企業にもリスクがあるという。経済参考報の王茜記者と杜学静記者は、以下のように指摘する。 「多くの日本企業および経営者は、中国を低廉製品の加工基地として捉えており、中国の低廉賃金、労働力を利用することを考えるのであって、中国経済が飛躍的に発展し、国際的地位および国際的影響力を高めていることを正視したがらず、ある分野では先進諸国のレベルを超えていることを認識していない。 同時に、多くの中国人も日本社会を客観的に理解することができておらず、日本に投資することの認識が不足している。日本の物価は世界で最も高く、投資コストも著しく高いと考え、対日投資に消極的である。……」 さて、日中合弁事業がうまくいかなくなるとき、この原因は何か。紛争当事者としては、経営者間のトラブル、労働者とのトラブル、取引先や消費者とのトラブルなどがある。紛争の原因は、経営形態や、勤労倫理、契約や法意識、または文化の違いなどに起因することが多い。こうした違いの認識が、合弁当初から、合弁の前提としてもたれ、このような前提条件の下で協働事業を行うことができているか否かで合弁事業の成否が決まることもある。意思疎通の問題(ミスコミュニケーション)であるといえなくもない。 日本企業が中国に進出した場合の苦労を、中国企業が対日投資する中で実感し始めていることであろうか。中国企業に買収された某日本企業にインタビューを申し込んだところ、「余りうまく行っていないので」と断られたことがある。中国人による日本企業の労務管理などは、やはり難しい面がある。 中国企業が対外投資をし、外国における合弁事業の難しさなどを認識したときに、中国に進出している外資企業をみる目、付き合い方も変わる日が来るのであろうか。自己の判断基準がすべて正しいとしてものごとを見ず、異文化理解をしようという姿勢が重要である。 整備、公司法の周知徹底や企業統治のあり方に関する所轄政府部門の法令、業界基準や最高人民法院による司法解釈の整備が重要になりそうだ。外資系企業の内部統制メカニズム、企業統治のあり方にも影響がある。注目しておかなければならない点である。
次号の更新は12月14日(水)ころを予定しています。
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