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LastupDate:2007/10/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第100回 ニセモノ商品の販売に対して10倍の損害賠償
――ニセモノ販売はなくなるか?

(2007年10月24日)

  広東省中山市中級人民法院は、2007年9月25日にニセモノの携帯電話を買わされた消費者(原告)が販売店(被告)を相手取って購入価格の10倍の損害賠償を求めて争っていた事件につき、原告の請求を容認し、被告に10倍の損害賠償を命じる判決を言い渡した。
  この判決は、商品価格の10倍もの高い損害賠償額を認めたものとして中国で初めての事例である。
  消費者権益保護法49条は、「事業者は、商品またはサービスを提供するときに詐欺行為を行った場合には、消費者の要求に従って、その受けた損害の賠償を増額しなければならず、賠償を増額する金額は消費者が購入した価格、またはサービスを受けた費用と同額とする。」と規定している。この規定から、過去の事件においては、一般に倍額までの損害賠償が認められていた、または倍額の損害賠償しか認められていなかったのである。
  事件は次のようなものであった(深圳新聞網 2007年10月19日)。
  2006年夏にX(以下、「X」という。原告)は、環球設備通信公司龍華2号店(以下、「Y」という。被告)において携帯電話を購入した。この際、Yの店員は「私たちチェーンストアは、全市に78もの販売店を有しており、品質には絶対に問題がありません。もしニセモノであったら10倍の賠償をします(假一賠十)。」と言う文句でセールスをしていた。そこで、Xは、代金を支払った際のレシートに、この店員に「假一賠十」と書かせた。後日、Xが購入した携帯電話に品質上の問題が生じ、調べたところ、購入した商品はニセモノであることが判明した。そこで、XはYに損害賠償を求め、Yはニセモノであったことを認め消費者権益保護法の規定に基づき、倍額の損害賠償に応じた。しかし、Xは、Yの対応が不服であるとして法院に訴えを提起し争っていた。一審法院では解決できず、上級審において1年以上経って、上記の通りの判決が言い渡された。
  さて、上述のとおり消費者権益保護法において、損害賠償額は2倍と規定されている。これに対して、中山市中級人民法院は、消費者権益保護法49条は賠償額の上限を制限する規定ではないとし、民法の規定により消費者と販売店が任意に具体的な賠償額を約定することができると判旨した。
  多くの外国企業が、中国においてニセモノ商品が販売されていることに苦悩している。ニセモノ商品の販売に対する損害賠償額が高くなることは、ニセモノ対策に腐心する外国企業にとっては朗報といえるだろうか。
  それでも、この判決の場合には、店員がレシートに「假一賠十」と書いていたことが判断をする上で重要な証拠と認定されたということがあった。このような証拠がなければ、10倍の損害賠償が求められることはなかったであろう。
  そうであると、なおニセモノ販売に対する規制は、必ずしも厳しいとはいえそうにない。特許庁は、10月18日に中国における日本の商標保護のためにニセモノだけでなく「類似商標」の使用についても刑事罰を科すように中国の関係機関に要請し、中国の商標法改正にも協力して行くことで合意したと発表した。まだ、中国においては、ニセモノに対する意識改革の途上といえそうだ。


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