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(2007年8月8日)
マクドナルドは、中国の815店舗で従業員の賃金を調整し、賃上げすると発表した(北京青年報 2007年8月7日)。 賃上げは12%から56%の幅で、平均30%になるという。今回の賃上げで、北京の場合には北京の従業員の最低賃金を15%上回ることになる。同様に上海では19%超、広州では19%超となる。賃上げ対象となる従業員は、全従業員の95%で、残り5%の従業員の賃金は十分に高いので今回の調整対象にはならなかった由である。マクドナルドの全従業員数は、4万人であるというから、グループ全体としては大変に大きな人件費の増加ということになる。 2007年上半期の売上げは昨年同期比1%の増加である。売上増加額の7%は各店舗の経理に奨励金として支給し、第1副経理が3%、第2副経理が1%の奨励金が与えられた。2006年には年収が25か月分の月給に相当したものが102名いたという。2007年上半期には、8割の店舗の経理が奨励金をもらっており、うち4%の経理は半年分の月給に相当する奨励金を得ているという。 マクドナルドが中国市場に参入して17年目で最大の賃金調整であり、臨時の従業員もこの賃金調整の対象になっている。 マクドナルドの中国における売上げは、全世界における売上げの2%を占める。これは、アジア、中東において日本に次ぐ売上げ規模である。マクドナルドは、毎年100店舗を新たに開店しており、このために多くの人材が必要であるからであるという。 マクドナルドの発表では、「人材の引きとめ」であるというが、二次的には中国全国における2006年の最低賃金基準額の引き上げ、および労働契約法の公布に伴っての賃金調整ということもありそうだ。今回の賃上げで、平均賃金が30%アップするとのことであるが、上述の北京のケースでは、この賃上げで北京の最低賃金を15%上回ることになるということであれば、現時点ではほぼ最低賃金が適用されているということにもなりそうだからである。 マクドナルドの発表によれば、この大幅な賃上げをしても商品価格は据え置くという。労働効率を高め、コスト削減で賃上げ分を吸収したい意向である。 つい最近、北京マクドナルドはある中国人弁護士から訴えを起こされた。この訴えは、北京市東城法院において正式の受理されたという(法制日報 2007年7月20日。法制日報網http://www.legaldaily.com.cn/2007fycj/2007-07/20/content_664993.htm)。訴えられた理由は、マクドナルドで商品を購入したときのレシートが商品名のみ中国語で記載され、他の表示は何れも英語であることが中国の法の規定に違反している。また、消費者の知る権利を侵害しているともいう。このため、マクドナルドはレシートを中国語にするとともに、正面で謝罪せよというものである。 中国進出企業は、中国市場で成功を収めていても、未成熟の市場であるが故に中国政府による政策の調整が少なからずあり、これにその時々対応しなければならないとか、さまざまな規則が整備されていないことへの対応、消費者の細かい要求にも対応しなければならないというようなリスクを少なからず抱えていることも確かである。
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