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(2007年5月23日)
2007年10月に予定されている中国共産党17回大会では、「社会主義法治」(社会主義における法の支配、socialist rule of law)を確立することが大きなテーマになる。 「社会主義法治」を掲げる中国共産党の政策的背景の一つには、市民法を形成し、司法参加を促し、公正・公平な立法・司法を実現することで、ともすれば弱体化していると考えられる共産党の基盤を改めて強化したいということにありそうだ。それでもなお、市民自身が立法や司法の手続に参加する権利を保障することは、民主の実現という側面からすれば望ましいことである。 市民の立法への参加については、憲法2条3項で「人民は、法律の規定に従い、各種の手段および方式を通じて、国の事務を管理し、経済および文化事業を管理し、社会事務を管理する。」と規定されており、市民が行政過程に直接参加する権利が保障されていたが、実務上はこの手続きに関する立法がなかった。今後、さまざまな分野で市民の行政参加のための立法がなされることになる。 市民の司法への参加については、例えば、人民陪審員制度(「人民陪審員制度の完備に関する決定」2004年8月28日公布、2005年5月1日施行)がある。 全国法院に登録されている人民陪審員は2.7万人で、この陪審員は裁判官とともに法廷審理に参与する。上海市は、2006年に全市で806人の人民陪審員が、1万2,094件の事件を審理した。これは、全市法院の全結審数の6.34%に相当する。人民陪審員は、大卒が97.6%、30〜60歳からがほとんどである。うち、党政府機関に所属する者が37%、企業・事業単位に所属する者が44%、その他業種に者が19%、女性は44.3%、民主党派、無党派の者が29.8%である。 人民陪審員制度の立法趣旨は、(1)公民の法に基づく裁判活動への参加を保障し、(2)司法の公正を促進させるため(決定前文)である。そこで、人民陪審員は、選任され、人民法院の裁判活動に参加する(決定1条)。 国と市民、社会公共の利益のバランスをどうとるか。格差が広がっている社会の中で、公正・公平の確保を如何に図るか。このためにはどのような基準が定められるのか。課題は尽きることはないが、国は、市民が立法・司法活動に参加することを活性化させようとしているし、市民自身も参加意識を持ち、積極的な参加をしようとしている。
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