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LastupDate:2007/5/9
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第89回 know howとknow why―企業秘密に対する意識は?

(2007年5月9日)

   中国で企業秘密に対して、これを企業固有の法益として保護しようとする意識は高まってきていると評価できるであろうか。2007年5月1日から「フランチャイズ経営管理条例(商業特許経営管理条例)」(2007年2月6日公布)に基づき、「フランチャイズ経営届出管理弁法(商業特許経営備案管理弁法)」および「フランチャイズ経営情報開示管理弁法(商業特許経営信息披露管理弁法)」が施行された。この新しい弁法の内容を検討すると、企業秘密(トレード・シークレット)は、まだ国のものという意識がありはしないかと懸念される。
   例えば、「フランチャイズ経営情報開示管理弁法」(以下、「弁法」という。)は、フランチャイザーに対してフランチャイジーに以下の情報を開示しなければならないとしている。

  1. フランチャイザーが徴収する費用の種類、金額、基準および支払い方式。この情報をフランチャイジーに開示できないときには、その理由。フランチャイジーによってこの基準が異なるときには、最高額と最低額の開示、およびその理由(5条3項1号)。
  2. フランチャイズ経営ネットワークの投資予算状況。例えば、フランチャイズ加盟費、養成訓練費、内装費用、設備の購入費、資金回転率などとその算出根拠(5条7項)。
  3. 中国国内のフランチャイジーに関する情報。例えば、フランチャイジー数、分布、授権範囲、フランチャイジーの経営状況に対する評価およびその根拠(5条8項)。
   先進資本主義国において私的自治の原則、契約自由の原則が貫徹されるところ、消費者を害したり、強者と弱者の関係で契約が規律されたりしない限り、上記ほど詳しく企業のノウハウ(know how)ないし企業秘密に属する情報をフランチャイズ経営の情報をフランチャイザーに開示しなければならないということは考えられない。
   さらに中国は、「フランチャイズ経営届出管理弁法」によりフランチャイザーは、同様の情報を商務部に届出なければならないとしている。
   上記情報の開示は、単にノウハウだけの開示であろうか。直接相手方に開示する情報には、フランチャイザーが中国全国で展開する他社との契約内容までも含まれ、かつこれを商務部にも届け出る。この情報には、ノウホワイ(know why)も含まれていそうである。国(商務部)もフランチャイズ経営のノウハウおよびノウホワイを得たいところなのであろうか。
   20年余前のある裁判で国有企業(原告X)の製造技術を他社(Z)に漏洩したおじ従業員(被告Y)が、Xから訴えられた際に、裁判所は、製造技術は国のものであり、これを1社が独占することは国益に反するとして、X敗訴の判決を下したことがある。さすがに今日ではこのような判決は見られないが、それでもなおフランチャイズ経営にかかわる管理弁法からは、企業秘密は国も共有するものとの意識があるのではないかと思われる。
   このような中国政府の意識および規定のためか、マクドナルドは、中国全国各地ですでに600店を開業するまでに店舗数を拡大しているが、何れも直営店である。マクドナルドの世界での店舗展開は、70%以上がフランチャイズ方式によるのと、大きな違いがある。


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