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LastupDate:2007/6/12
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第91回 仏ダノンが娃哈哈集団関連企業を米国で提訴

(2007年6月13日)

   仏ダノンが、2007年6月4日に「中国娃哈哈集団有限公司」のグループ会社に属する「恒楓貿易有限公司」と「杭州宏勝飲料有限公司」を相手取ってカリフォルニア州最高裁判所に商標権侵害にかかわる訴えを提起した(経済参考報、2007年6月6日)。
   ダノンが訴えたのは、中国における合弁パートナーである中国娃哈哈集団有限公司傘下の杭州娃哈哈食品飲料販売有限公司が、不法な手段によってダノン娃哈哈合弁会社の製品と類似した製品をダノン娃哈哈の製品の販売会社「杭州娃哈哈食品飲料販売有限公司」を使って販売し、ダノン娃哈哈の市場を侵害しているからだという。
   ダノンと娃哈哈集団は、11年前に合弁会社を5社設立した。以来、合弁会社数は39社になり、ダノンが51%の株式を保有している。このような中で、娃哈哈集団は、ダノンとの合弁に不満があり、ダノンとは資本関係のない合弁会社を設立し、「娃哈哈」の商標で飲料および食品を生産し始めた。そして、杭州娃哈哈食品飲料販売有限公司が製品の販売に責任を負っていた。そこで、2006年末にダノンは、娃哈哈が契約に違反して商標を使用しているとして、ダノンと資本関係のない合弁会社を娃哈哈集団が買収して、ダノンが51%の株式を保有するようにとの要求をした。
   ここにダノンと娃哈哈集団との間で、「娃哈哈」商標を巡る激しい争いが生じた。ダノンは、「娃哈哈」という商標は、ダノンと娃哈哈との合弁会社に帰属するものであり、これを娃哈哈集団の他の企業が勝手に使用する権利はないと主張する。これに対して娃哈哈集団は、中国側が一貫して「娃哈哈」の商標の所有者であると
   本件に関しては、度重なる協議の末、双方共に譲歩することがなかった。そして、両当事者は、5月中旬にストックホルム仲裁裁判所に仲裁の申立をしたところであった。
   浙江大学の経済法学者である呉勇敏教授は、ダノンがスウェーデンと米国といった第三国で仲裁や裁判を行おうとするのは、明らかに中国側の干渉を避けようとしたのであろうという。これによって娃哈哈集団側の応訴コストおよび難度も高まると予測する。
   外国企業が中国においてライセンスビジネスを行う場合、商標権の問題がトラブルの原因となることが少なくない。合弁会社の場合においても、合弁会社独自の新商標または合弁パートナーである外国企業と中国企業との結合商標の使用権の帰属の問題などが生じる。契約書に如何に詳細に規定しておいても避けられない問題なのであろうか。または、契約は自己の利益のためであれば破ってもいいもの、または契約の抜け道を探るのは当然というような意識の存在、道徳観念の欠如、道義的責任の欠如の問題なのであろうか。筆者には判然としない。


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