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LastupDate:2008/1/23
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第106回 行政機関を訴える

(2008年1月23日)

  市場経済がますます発展している中国で、公民や民間企業の権利を保護する法制が整備されてきており、これにつれ公民や民間企業の権利意識は高まり、行政機関に対しても権利の主張をすることが多くなってきている。
  北京オリンピックを間近に控えて、北京市の都市管理行政機関が市内の広告を任意に撤去していることから、広告会社が同行政機関を人民法院に訴えるという事件が増えている(中国青年報 2008年1月2日、http://jjckb.xinhuanet.com/xwjc/2008-01/02/content_79909.htm)。
  北京市博天恒業公司は、朝陽区北土城路の金孔雀大廈に37万元をかけて設置したNECの広告看板が、あるときに何の事前の通知もされず、かつ理由も根拠も示されずに北京市朝陽区都市管理大隊によって撤去されたことから、同大隊を相手取って北京市朝陽区人民法院に原状回復と損害賠償を求める訴えを提起している。
  北京市朝陽区都市管理大隊は、博天恒業公司の広告看板は屋外広告の管理秩序を乱し、北京オリンピックの準備業務の妨げになるからであると主張しているが、具体的な法的根拠は示されていないようである。
  報道によると、2007年に北京市で2万件以上、乃至は3万件程度の広告看板が強制撤去されているようである。従って、同様の紛争は博天恒業公司だけでなく、他の広告会社も北京市の都市管理行政機関を相手取った訴えを人民法院に提起している。
  この訴えの帰趨は、まだわからないが人民法院は行政機関側に配慮、立脚することなく、法に基づいた公正、公平な判断ができるであろうか。
  浙江省のTaizhou市某県のZhao Ruiは、土地使用権にかかわる県政府との紛争に関して、人民法院で勝訴判決を得た(China Daily 2008年1月17日)。2003年から2007年の5年間に47万3,837件の行政訴訟が提起されているという。
  従来であれば、お上に対しては泣き寝入りしていたであろうところ、今日では公民が自らの権利主張を強くするようになってきている。上述の土地使用権をめぐる紛争は、公民の権利を確保しするための物権法を国が制定したということに大きく影響されている。中国の各関係機関は、公民の権利確保ということをよく認識し、このためになお一層の各種制度の改善に努める必要がある。
  行政機関は、民生を行う場合、民意を良く聞く必要がある。例えば、オリンピックを控えて都市の景観、美観を確保しようとするのであれば、この都市計画の策定に住民や関係企業を参加させるなどを考える必要もあるだろう。
  人民法院は、司法の行政機関からの独立を確保するための体制改革を行い、裁判官の要請をしなければならない。
  公民や民間企業が行政機関を人民法院に訴えるというようなことが普通に行われるようになってきたことは、民主が一歩進んできたことと評価できようか。今後は行政訴訟の件数も随分と増えるのではないか。全人代は、行政訴訟法の改正などの検討が必要になる。


次回は2月13日(水)の更新予定です。

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