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(2008年3月12日)
2008年3月5日から北京で始まった第11期全国人民代表大会第1回会議において、温家宝首相は、「政府活動報告」のなかで民生改善のための政策を打ち出している。 「民生:人民の権利と社会の公平正義」(本コラム、第105回、2008年1月9日)において、2008年の裁判および立法の着眼点は、民生であるということを紹介したが、上述の政府活動報告では、「民生リスト」とでも呼べるような政策提案がなされている(経済参考報、2008年3月6日)。 そこで、以下、政府活動報告において、どのような「民生リスト」が提示されているのかを簡単に紹介する。 (1) 公共サービスの無料リスト 一部の公共サービスを無料化するとしている。例えば、以下のものがある。@2007年に既に実施した農村における義務教育の無料化を、今秋から都市においても全面的に無料化する。A公共性のある博物館、記念館および愛国主義教育モデル施設を今年、来年の2年間について無料で開放する。Bエイズ、結核などの疾病患者の治療費を無料にする。 (2) 生活保護に関する貧困者支援リスト 貧困層の衣・食・住・医療などについて生活保護を充実させる。また、中低所得者層の生活保護にも十分に配慮するとしている。例えば、以下のものがある。@住宅の低額賃貸、医療衛生体制の改善、B生活保護手当、貧困学生に対する手当の増額、C中西部地区の農村における入院分娩補助、D企業従業員の賃金引上げ、などである。 (3) 財政予算増額分野のリスト 財政予算を増額する分野は、教育、医療、社会保障など一般市民の生活に直結する分野である。例えば、@「三農」予算は、2007年比1,307億元増の5,625億元とし、A教育関係予算は、2007年の1,076億元から1,562億元とし、B衛生事業予算は、2007年比167億元増の832億元とするなどである。 (4) 豊かな生活のための基準引上げリスト 小康社会建設のために市民の生活にかかわる各種の基準値を引上げる。例えば、@全国の農村地区で新しい医療制度を確立し、今後2年の間に一人当たりの支援積立金を50元から100元に引き上げ、A貧困支援額を増額し、B最低生活保障制度を整え、経済成長および物価水準による生活保障基準の調整メカニズムを確立し、C2008年から3年間にわたって養老金(年金)の支給額を引き上げ、D経済的に困難な農村家庭の生活費補助額を引き上げ、E農村の計画生育家庭の奨励制度の拡大と奨励金の引き上げ、F年内に7,700項目の食品、薬品およびその他の消費財の安全基準の制定・改正を実施する、ことなどである。 以上を実現する上での障害として、最近の物価上昇が気にかかる。日本の新聞などで報道されているところであるが、2008年の物価上昇率の目標値は4.8%前後であるという。この数値は、些か高すぎる。
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