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LastupDate:2008/3/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第110回 個人情報保護法制定を望む声

(2008年3月26日)

  中国で「個人情報保護法」の制定を望む声が高まってきている。2008年3月の全国人民代表大会の席上、福建省人民検察院副検察長の李明蓉ほか全国各省の人民検察院関係者が、個人情報保護法制定の必要性について発言している。
  このように個人情報保護法制定を望む声が高まってきているのは、個人情報を利用した犯罪が急激に増加してきているという問題が背景にある。
  社会主義市場経済の進展、および情報産業の発展、とりわけインターネットの普及などにより、個人情報が氾濫してきている。これら個人情報は、例えば、各種マーケティングに使われるアンケート調査、ネットを通じた商品購入、各種の会員登録、求職、自家用車の購入、住宅の購入、病院での治療・入院など、さまざまなルートで集められる。
  この個人情報が、各関係機関や企業から無意識に流出し、または意図的に漏洩され、売買されることがある。そして、このことがさまざまな被害をもたらしている。この被害には、(1)各種の勧誘電話が頻繁にかかってきたりして、市民の日常生活を不安定にさせ、商業道徳や秩序を破壊するというものから、さらには、(2)個人情報を不法に盗み出すという窃盗事件、(3)対立する相手の個人情報を入手して、相手を誹謗中傷するなどがある(張皎全国政治協商会議委員・中国民主建国会中央秘書長)。
  つい最近まで、このような個人情報について、その管理意識はそれほど高くなかった。しかし、上述の通り個人情報を利用した事件や日常生活上の不便や被害の発生が急激に増えるなかで、対応が必要になってきたといえる。
  個人情報保護については、2002年12月の第9期全人代常務委員会第31回会議の席上において、民法改正案が審議された際に、私人の情報の秘密を保護しようとの条文の加筆が検討されたことがある。しかし、このときには個人の秘密保護としては条文化されなかった。民法においては、名誉権や肖像権といったかたちで個人の権利保護がなされるにとどまっているのが現状である。今日においても、個人情報の漏洩で権利侵害があったとすれば、名誉権による訴えが一般的ということになろうか。
  その後、2003年に国務院の関係部門が、学者ら専門家による「個人情報保護法起草チーム」を設置し、立法手続が開始されている。このチームによる第1次草案は2005年に完成していると伝えられる。ただ、現時点においては、まだ全人代の立法計画には編入されていない。それでも、個人情報の漏洩にかかわる紛争や事件の急増から、個人情報保護法制定のスピードは早まると考えられる。
  なお、個人情報保護法の制定とともに、個人情報公開条例の制定も検討されることになるであろうか。「档案」(身上記録)という個人では閲覧が許されない個人情報が存在するが、不当な記載の有無について、当該個人が公開を求め、訂正をもとめる権利ということも将来的にはあるだろうか。


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