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LastupDate:2008/4/9
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第111回 労働契約法施行3ヶ月で労使紛争の激増

(2008年4月9日)

  労働契約法が、2008年1月1日に施行されてから3ヵ月余が経過した。労働契約法の施行により、企業の人事労務管理には何か変化があったであろうか。企業は、労働契約の見直しを行い、就業規則の改定もしてきているが、さらに検討を要する事項はないか。労働契約法施行後3ヵ月の動向を見てみる。
  労働契約法施行以降、労使紛争が激増しているようだ(法制日報、2008年4月4日)。江蘇省無錫市高新技術産業開発区人民法院の場合には、3ヵ月間に27件、前年同期比68.8%増の訴えがあったという。全国の何れの人民法院においても同様のようである。
  紛争の内容は、(1)労働契約の不存在、(2)企業による労働者のための社会保険の未納、(3)超過残業、(4)労働契約の一方的解除、(5)賃金および残業代の未払い、(6)労働契約解除に伴う経済補償金の未払い、(7)労働者に著しく不利な内容、または法令に違反している社内規程、などに関するものが多く、従って、労働者が原告となる訴えが多いといえそうである。
  例えば、上記(1)に関して、北京市海淀区人民法院では、労働契約法82条には、使用者が労働者と労働契約を締結しない場合には、労働者に対して毎月の2倍の賃金を支払わなければならないという規定があるところ、労働契約が締結されておらず、このために労働者が2倍の賃金を要求して訴えを提起することが著しく増えているという。
  なぜ、労働紛争が激増しているのか。その理由として、以下の4点が考えられる。

  1. 労働法の教育普及により、労働者の権利意識および法意識が高まってきた。
  2. 一部の企業は法意識が希薄であり、労働者に不当な労働を強要している
  3. 企業の市場経済のなかでの競争が激化していることに伴い、企業は生産性を向上させるため、または企業の合併、破産、再編が多くあり、これに伴って大量の人員削減が生じている。
  4. 一部の労働行政部門の責任意識が希薄であり、厳格に法を執行せず、企業が労働関係法規に違反して労働者の権利を侵害することがあっても、これにすみやかに対処し、解決をしようとしない。
  以上のような理由、とりわけ、大量の人員削減という現実があり、企業は人員削減後の労働者の労働強度を不当に引き上げたりするという実態があり、これに対して労働者の権利意識および法意識がたかまり、発言するようになったため、労働紛争の傾向としては、従来の個別労働紛争に対して、集団労働紛争が増えてきている。
  江蘇省無錫市高新技術産業開発区人民法院によると、集団紛争が増えている業種には、交通、運輸など企業が多く、当該企業の運転手など労働者による訴えが多いという。彼らは、必ずしも定時の労働ではなく、連続労働、残業も多く、そうであるのに人事考課、賃金制度が確立されておらず、相対的に低賃金であるというようなことが原因として考えられる。
  中国進出日系企業においてもホワイトカラーに対する事業場外労働、裁量労働がある。また、ブルーカラーに対する「みなし労働制」のような管理も行われていることもあるだろうか。労働契約法の施行により、濫訴の傾向もないとはいえない。中国進出企業は、単位労働契約や就業規則の見直しだけでなく、人事労務管理方式についても見直す必要が生じてきているのではないだろうか。


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