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(2008年4月23日)
中国の職場におけるセクハラが増加傾向であり、社会問題化しているといわれる。 中国進出日系企業においても、この問題に十分注意し、就業規則や従業員手帳など社内規程においてセクハラを禁止する定めを検討することが必要である。 2002年7月に湖北省武漢市人民法院において、女性教師が職場でセクハラにあったとして、人格権侵害で相手方を訴え、相手方被告に損害賠償と謝罪が命じられた判決が下された。これが、中国におけるはじめてのセクハラに関する勝訴事例である。この前後にも幾つか裁判事例が見られるようであるが、勝訴判決を得るのは必ずしも容易ではなかったようである。 この意味で、職場におけるセクハラ問題が顕在化し、社会問題化してきたのは、2005年位からであろうか。2006年6月にILOと中国労働社会保障部、全国総工会、全国婦人連合会、中国企業連合会が共催で、職場内におけるセクハラに反対する国際シンポジウムを開催している(法制日報 2005年6月5日)。 それでもなお、現時点において、全国レベルの中国の法律で明確に職場内セクハラを禁止するような規定は存在していない。そこで、全国人民代表大会常務委員会は、婦女権益保障法や労働法を改正して、セクハラを禁止する条文を規定するための審議をしている。 婦女権益保障法改正草案では、職場内における地位を利用して女性に対するセクハラを禁止し、男女平等の労働権利を侵害することの禁止などが検討されていた(新華社 2005年6月26日)。2006年3月1日から改正された婦女権益保障法が施行され、ここでは男女平等が国の基本的な国策であり、あらゆる女性差別を禁止することが定められた。ただ、職場におけるセクハラに関しては、具体的な規定が置かれず、改正はなお不十分であるといえるのかもしれない。 そうであるところ、江蘇省は、2008年3月8日施行の「江蘇省実施弁法」において、全国ではじめて法律形式による職場におけるセクハラを禁止する規定を定めた。具体的には、女性の意思に反して、猥褻な言葉、文字、写真・絵、電子データ、動作によって女性に対するセクハラを行うことを禁止するというものである(揚子晩報 2008年2月28日)。 今後は、労働法の改正などでも同様の規定が定められることも考えられる。 中国社会科学院が実施した職場におけるセクハラ問題に関する調査では、中国における新しい経済実体で外商投資企業、私営企業において、とりわけセクハラが多いという。回答した女子従業員のうち、これらの職場でセクハラを経験したというものが36.8%もいた(法制日報 2005年6月5日)。 従って、はじめに述べたように中国進出日系企業においても、セクハラを禁止する社内規程を設けることが必要であると考える。
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