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(2008年12月24日)
2008年12月14日に北京、広州、杭州の学生による「コカ・コーラ調査チーム」による公開討論会が北京中央民族大学において開催された(検察日報 2008年12月17日、中国労働仲裁網 http://www.chinalabor.cc/info/html/93/n-3793.html、中国青年報 2008年12月18日、中国労働仲裁網 http://www.chinalabor.cc/info/html/02/n-3802.html)。 これは、上記3都市の9人の学生が、一般労働者としてコカ・コーラの6か所のボトリング工場に潜入して調査をした結果を発表したものであった。学生は、コカ・コーラには重大な労働契約法違反があるとした。とりわけ派遣労働者に対する待遇が問題であるという。 潜入調査した学生によると、コカ・コーラにおいて、次のような労働者に対する不当な待遇や違法な扱いがあるという。 コカ・コーラ・ボトリング工場では、多くの派遣労働者がいずれも2年以上の勤務をしており、最長では勤続10年以上になる者もいる。杭州中萃食品有限公司の場合には、長期的に大量の派遣労働者を使用しており、派遣労働者の割合が全労働者数の90%を超え、かつ、労働者に対して強制的に「労働契約協議解約書」にサインさせている。広東太古コカ・コーラ有限公司は、労働者の賃金を11%以上もピンはねをしている。同有限公司の子会社である東莞公司の労働者は業務上ケガをしてもほったらかしにされ、食事も非常に粗末で量も足りない。同じく恵州公司は、残業が毎月150時間にもなる。上海申美飲料食品有限公司は、不当にアドミッション・フィーを徴収しており、この額は100元から600元にも上る。 コカ・コーラは、以上の学生の報告に対して、速やかに反応をして、翌日の12月15日に次のような回答をしている(中国広播網 2008年12月19日、中国労働仲裁網http://www.chinalabor.cc/info/html/05/n-3805.html)。 コカ・コーラは、正規労働者や派遣労働者からいかなるアドミッション・フィーも取ってはいない。学生が指摘しているのは、仲介費であろうが、これは派遣労働者が仲介公司に登録して職を探しているので、仲介公司が労働派遣公司を経由して紹介をしている中で派遣労働者から徴収しているもので、コカ・コーラおよび労働派遣公司とは何ら関係のないものである。コカ・コーラは、労働者に毎月定まった期日に賃金を支給しており、奨励金も翌月に支給しており、違法な行為はない。賃金がピンはねされているというのも誤解である。 学生らによるコカ・コーラが派遣労働者を不当・違法に扱っているという問題は、検察日報、中国青年報などで広く報道され、一般にも知られる問題になっている。報道は、「労働監督行政部門は、コカ・コーラの違法な雇用について手をこまねいて傍観していていいのか」という論調である。そこで、労働監督行政部門が調査に入ったと伝えられている(前掲出所に同じ。)。 労働契約法66条は、労働派遣は、一般に臨時的、補助的または代替的な業務について行われるものであると規定しているが、この解釈も必ずしも明確になっているわけではない。法の不備という問題もあると考えるが、コカ・コーラに調査に入った労働監督行政部門によって、学生が指摘した問題がどのように判断されることになるのか。具体的な判断は、まだ示されていないが、成り行きは注目される。中国進出日系企業においても少なからず派遣労働者の雇用がある。今回のコカ・コーラの事案により、派遣労働者の雇用に関する明確な判断基準が示されることになるのかもしれない。
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