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(2009年1月14日)
2008年12月下旬に北京で「対外開放30周年回顧展」が開催された。筆者は、この時期日本学術振興会の科学研究「中国の労働紛争処理法と労使コミュニケーション」の調査のために北京に出張したので、大変にすばらしい展示であるという中国人弁護士や日系企業の中国人社員の薦めもあり、回顧展に足を運んだ。 1978年12月の第11期3中全会以降の対外開放、中国経済の発展の歴史をさまざまな分野のデータから振り返るもので、写真や統計パネルが展示されているだけのものである。それでも北京市内の市民だけでなく、全国の政府関係機関、企業や学校など各単位からの参観者があり、会場は非常な賑わいであった。 回顧展の出口には「留言簿」(メッセージ帳)が置かれている。さまざまな人が積極的にメッセージを残しているのが印象的だった。どのようなメッセージがあるのかページを繰ってみた。今の時期、共産党や政府に対する批判的なメッセージはありはしないかとも思いながらであったが、「中国頑張れ(加油)」や「中国はすばらしい(真好)」というものばかりであった。 出口には、対外開放、改革開放に関する商務部出版社と経済管理出版社の発行した書籍の見本が、大きなカウンターに10冊程度並べられていた。“これは見本品であり、無料で贈呈するものではありません”と書かれていたので、ここに立ち寄る人は少なかったが、筆者は1冊ずつ手にとってみた。 王府井の新華書店や西単の図書城でも資料を購入していたが、書店では見かけなかった本だったので、カウンターの中にいた人に、これとこれが欲しいと指差した。見本品という意味をカウンターに並べているものは閲覧用の見本で、欲しいものがあればカウンターの後ろから新しい本を出して販売するものと勘違いしてのことだった。 「これは見本品ですよ。」と経済管理出版社の人。 「あっ、販売用の本は置いていないのですか。」とがっかり。 すると隣にいた商務部の人が「売ってあげれば。」 「そうね。いいわ。でも、少し汚いけど。」 「あっ、没問題。謝謝。」 1冊90元の本を3冊購入した。 「領収書が欲しいんですけれど。」 「領収書はここにはないけど。」 「そうですか。」と語尾を落として言うと。 「後で郵送してあげましょうか。」 「でも、中国でなく、日本ですよ。」 「まあ、大丈夫でしょ。住所を書いて。」 本当に領収書を送ってくるだろうかと思いながらも、個人で購入するものなので、領収書が送られてこなくてもいいというつもりで、住所を書いて渡した。 帰国して数日後、EMSで領収書が自宅に届き、1枚の領収書が同封されていた。郵送料は、120元かかっていた。270元で販売した本に120元もの郵送料をかけて送ってきてくれるとは、驚きであったし、うれしいことでもあった。 杓子定規な日本人の対応とは違う中国人の臨機応変さ、親切を感じた。
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