コラムに関する感想
お問い合わせ
LastupDate:2004/4/14
トップチャイナウォール
コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第13回 市民の憲法施行状況に対する評価

(2004年4月14日執筆)


中国人の憲法意識(7)―市民の憲法施行状況に対する評価


    中国の憲法施行状況は、市民にどのように評価されているか。この評価基準は、憲法で規定されている国の精神が社会生活の中で貫徹され、定着しているといえるか否かということになる。
   2004年3月の全国人民代表大会において、憲法が改正された。これは、激動するといっても良い中国の経済・社会環境の中で、現実に即した憲法改正が迫られたからである。
   そこで、韓大元と王徳志は、市民が憲法施行状況に対してどのような評価を与えているのかについて調査している(韓=王「中国公民憲法意識調査報告」『政法論壇』中国政法大学学報、2002年6期)。

   韓・王は、以下の設問をし、下図のとおりの回答結果を得ている。
  1. 設問 「あなたは、中国の憲法施行状況についてどのように評価しますか?」

       回答  (1)良い、(2)まあまあ良い、(3)あまり良くない、(4)悪い、(5)わからない



  2.設問 「あなたは、ここ数年の民主政治の確立状況についてどのように評価しますか?」

   回答
     (1)進展がある、(2)ある程度の進展がある、(3)あまり進展はない、

     (4)進展はない、(5)わからない」
(注)データを合計すると100%にならないが、これは原文のままである。

 設問1に関しては、マイナス評価のほうが多い。また、「わからない」という回答は、憲法についての教育が十分になされていない、ないしは憲法について無関心であるということを示した回答であるといえる。そうであるならば、憲法施行状況に対する評価は、60%以上が満足していないといえる。この原因は、どこにあるのか。韓・王は、権力の制約メカニズムが十分に機能していないことがあり、権力による腐敗現象が蔓延っていることがあるのではないかとしている。市民の基本的権利を一層保護する必要性を指摘している。筆者は、中国出張の折に時間が許せば、最高人民法院や最高人民検察院の訴状提出所を見に行くが、開門前にはしばしば門に地方市民による地元も権力者の腐敗を訴える貼り紙があるのを目にする。
   設問2は、憲法施行状況を評価する上で、最も重要な視点である民主政治の確立についての評価を問うものである。数字に表れたとおり、ある程度の進展が認められはするものの、さほどの進展もないという評価が与えられているといえる。
   民主主義の原理は、市民権の原理であり、これは具体的には多数決主義、首長の選挙(これが行なわれること自体が民主であるとは言えず、手続上の最低条件として、秘密投票、普通選挙が行われることが必要であるが)などで実現されるものである。中国の政治・社会体制においてこれを考えれば、共産党の強制力や権威主義による支配に対し、共産党に批判的な自由な発言をする機会が与えられ、この中で市民による普通選挙が実施され、その結果(たとえ共産党員が選挙の結果選出されなくとも)を共産党も認容することであろう。
   農村の普通選挙制度はある程度進展してきたが、都市における普通選挙制度の改革にまでは至っていない。今後は、都市における選挙制度の改革などが、議題に上がってこよう。



次号の更新は4月28日(水)ころを予定しています。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002 GLOVA-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はGLOVA-Chinaの商標です。