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(2009年2月12日)
2009年2月1日に国務院の中央第1号文献「2009年に農業を促進し、農民の持続的増収を安定的に発展させることに関する若干の意見」が発布された。 この文献が意味するものは何か。中国において、農村の問題、農民の問題を含む農業問題が、極めて深刻であり、また、これを発展させることが難しいということである。今後の中国経済を予測する上で、農業問題に注視することが重要であるといえる。 なぜ、このように言えるかというと、中央1号文献とは、その年に中共中央国務院が発布する最初の文献であり、中国政府の当該年の最重要課題が何であるかを示す指標となるものであるからである。「農業」が主題となる中央1号文献は、これで改革開放以来11回目となり、直近では6年連続となった。 2009年の中央1号文献は、どのような内容のものであるのか。 孔祥智(人民大学農業与農村発展学院教授)は、この文献においては「民生」に重点を置き、次の5点の施策が強調されていると指摘している(中国共産党新聞網http://theory.people.com.cn/GB/49154/49369/8753821.html)。主な5つの施策には、(1)農村教育および医療衛生事業の推進、(2)農村の社会保障制度整備、(3)農村の電力網建設、(4)農村の道路建設、(5)新たな貧困世帯の生活保障基準の実施がある。 ただ、筆者は、農村問題を根本的に解決し、農民を豊かにするためには、農業を振興することが不可欠であると考える。このとき、農業の産業化を図るということが積極的に検討される必要があるのではないかと考える。 実際に文献において農業科学技術の発展を促進するということが強調されている。そして、農業分野の特許権、商標権などの保護を強化し、さらにこれらの権利を抵当にした融資制度などについても言及されている。2008年9月には、すでに中国農業科学院に「農業知識所有権研究センター」が設置されている。 2008年12月3日に最高人民法院は、「農村の改革発展を推進するために司法保障および法律サービスを提供することに関する若干の意見」を発布した。この意見においては、人民法院として審判活動の中で農村の土地資源にかかわる紛争処理なども重要課題ではあるが、より強調されていることに農業知的所有権を保護し、もって農業科学技術のイノベーションを促進しようということがある。 孔教授は、1人当たりの年収が786元(2007年。以下、同様)の絶対貧困層および1人当たりの年収が786元から1067元の低所得層を一体化して、貧困を認定とする年収の基準を引き上げ、より多くの貧困層が裨益できるようにする措置が関係部門により決定されているという。 現時点における貧困層が、自活できるようにするためにも農業の産業化、そしてこの場合における農業知的所有権の保護・強化ということが重要になるだろう。
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