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LastupDate:2009/3/25
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第134回 コカ・コーラによる匯源公司の買収否決

(2009年3月25日)

  2009年3月18日、商務部は、コカ・コーラ社が2008年9月18日に独占禁止法と国務院の「事業者集中の申告基準に関する規定」の定めに基づき提出していた匯源公司の買収計画を認容しない決定を下した。
  コカ・コーラ社は、24億ドルを投じての匯源公司買収計画をとりやめることになった。
  商務部は、独占禁止法27条により、(1)関連市場の市場シェアおよび支配力に関する事業者集中の状況、(2)事業者集中による消費者および関連経営者に対する影響、(3)国民経済発展に対する影響、(4)匯源ブランドの果汁飲料市場の競争に対する影響などについて審査をした。   この結果、商務部は、事業者集中が市場に不利益を生じると判断した。この根拠として、次のことが指摘されている。

  1. コカ・コーラが炭酸飲料市場で支配的地位を得ると果汁飲料市場においても支配的地位を得る可能性がある。
  2. 匯源ブランドを支配することで、果汁飲料市場でも大きな競争力を得る。
  3. 国内の中小果汁メーカーの市場参入機会が阻害され、中国の果汁飲料市場の有効な競争メカニズムが阻害され、当該業界の健全な発展に不利である。
  この商務部の決定について新浪網が行ったネット上のアンケートでは、72.8%が商務部の決定を支持している(経済参考報 2009年3月19日)。そして、「中国の民族ブランドが侵害される悪夢を断ち切った」というような書き込みが見られるという。
  商務部が、上記のような世論に屈したとは思わないが、独占状態および事業者集中の判断基準は、なお曖昧であるといえる。
  あるマーケティング会社のデータによると、匯源は、100%果汁飲料市場の46%、中濃度果汁飲料市場の39.8%を占め、当該業界ではトップである。コカ・コーラは、果汁関係ブランドの25.3%を占めている。両社で果汁飲料市場の70%のシェアを占めるという(中国青年報 2009年3月19日、http://finance.people.com.cn/GB/1045/8986389.html。当該記事では、対象となる市場の概念が不明確であるが、上記の通り叙述されているので紹介する。)。
  商務部の上記決定の判断根拠を簡単に整理すると、市場競争状態を判断し、消費者に対する影響および中小企業の市場参入機会を勘案し、競争政策と産業政策の統一およびバランスを考えたということである。
  そうであるから商務部の決定においては、単に炭酸飲料市場におけるシェアを見るだけではなく、「コカ・コーラが炭酸飲料市場で支配的地位を得ると果汁飲料市場においても支配的地位を得る可能性がある。」ということをいっているのであろう。
  しかし、企業買収は法的にも認められた行為であり、企業買収は企業の市場行為であるから、このことに政府が過度に干渉することには慎重であるべきあると考える。コカ・コーラがブランド力を利用して小売店などに抱合せ販売を強要して、その結果消費者が高い商品を購入させられるか否か、中小果汁メーカーの市場参入機会が阻害され、中国の果汁飲料市場の有効な競争メカニズムが阻害され、当該業界の健全な発展に不利であるとは断定できない。また、このような事態に対しては、別の規整方法がある。
  このように考えると、商務部の決定については、行政裁量が大きすぎるということがいえるのではないかと思われる。商務部の決定は、外国企業が中国企業を買収することの困難さを思わせる。外国企業の対中投資意欲を減退させることにもなりはしないかと懸念される。 。

次回は4月8日(水)の更新予定です。

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