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LastupDate:2009/4/22
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第136回 蔓延する外資の夜逃げ

(2009年4月22日)

  人民法院は、2009年4月に「金融危機商事事件審判工作会議」を開催した。この会議の席上、渓暁明・最高人民法院副院長は、国内外のマクロ経済環境の変化に伴って生じる矛盾や紛争が増え、2008年2月から2009年2月までの間に法院が受理した事件は前年同時期比で19.62%増えたという(http://news.xinhuanet.com/legal/2009-04/18/content_11207626.htm、新京報 2009年4月18日)。
  この事件のなかで、債務超過に陥っている外資企業の夜逃げが蔓延していることが目立つ。正規の法的手続をとらずに、労働者の賃金も未払いのまま、また、その他の債務処理をそのままにして、突然外国企業の経営者が姿を消すということなどが相次いでいる。
  2008年11月19日に商務部、外交部、公安部、司法部は、以下のとおりの「外資の非正常な撤退にかかわる中国の利害関係者が国外追及および訴訟を行うことに関する手引き」を発布している。外資の夜逃げが多いことに対する措置である。この手引きの具体的な内容には、次のような事項が含まれている。

  1. 中国は、外資の非正常な撤退から生じた経済紛争の処理に対しても(国境を越えて)必要な法的根拠を提供する。
  2. 外資の非正常な撤退事件が発生した場合には、中国側当事者はすみやかに関係の司法主管部門(法院や調査機関)に民商事または刑事事件の立件を申請せよ。中国政府機関は、相手国と締結している「民商事司法共助条約」または「刑事司法共助条約」に基づき、条約の規定する本国の中央機関を通して外国側に司法共助を請求する。
  3. 正常な清算義務を履行せずに債権者に損失をもたらした有限責任公司の株主、株式有限公司の支配株主および董事長、ならびに公司の実質的支配者である外国企業または個人は、民事責任を負担すべきであり、公司の債務に対して連帯賠償責任を負う。
  4. 悪意をもって債務、巨大な税額から逃避し、犯罪を構成する疑いのあるものについては、外交ルートを通じて国外に逃亡した犯罪容疑者の引渡を請求し、または刑事訴訟の移転請求をし、犯罪容疑者を法的に追及する。

  さて、中国事業を行う場合には、終盤戦略の撤退障壁と撤退コストについても事業を始める段階から考慮する必要がある。例えば、(1)労働者への経済補償、再就職斡旋、(2)土地利用を中途で解約する場合に発生する臨時の債務、(3)設備の撤去コスト、(4)資産の評価および処分、(5)顧客へのサービス継続、(6)企業信用の失墜(他事業との関連性)などについて検討しておく必要がある。
  これらの処理方法を誤ると円滑な撤退が難しくなり、労働者や企業所在地の政府関係機関やその他利害関係者との間でトラブルが生じることがある。中国に設立した企業内部の関係だけでなく、地元政府、協力企業、顧客(ユーザーや消費者)、地元住民など企業を取り巻くさまざまな利害関係者がいることを認識し、これら利害関係者との円滑なコミュニケーションを図っておくことが肝要である。

次回は5月13日(水)の更新予定です。

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