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LastupDate:2009/4/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第135回 雇用差別

(2009年4月8日)

  世界同時不況のなかで中国も例外でなく就業圧力が増すところ、雇用差別の存在が問題になってきた。現在、中国で「雇用差別禁止法」(中国語で、「反就業岐視法」という。)が起草されており、近く全国人民代表大会に草案が上程される予定である(法制日報、2009年4月2日、http://news.xinhuanet.com/legal/2009-04/02/content_11117813.htm)。
  先に公布された「就業促進法」においても雇用差別の禁止が規定されているが、その実務上の執行状況が十分ではないので、「雇用差別禁止法」の制定、公布が強く求められている。
  2004年に24人の学者が「雇用差別研究課題組」を組織し、この問題を研究していたが、このチームが同法案の草案を作成している。
  雇用差別とは、「使用者が労働者の職業能力および職業内容と客観的にかかわりのない要素によって、雇用機会または職業待遇を差別し、労働者の平等な就業の権利を取消しまたは損なう行為」をいう。
  2006年5月と10月に中国政法大学憲政研究所は、北京、広州、武漢、南京、瀋陽、成都、西安、鄭州、銀川、青島の10都市において雇用差別に関するアンケート調査を実施し、3,500通の調査票を送付し、3,454通が回収されている(法制日報、2009年3月23日、http://news.xinhuanet.com/legal/2009-03/23/content_11056064.htm)。
  このアンケート調査によると、雇用差別の有無を問う設問について、あるという回答が85.5%にものぼる。実際の就職活動の中で、ある程度差別を感じたことがあるという人が54.9%おり、非常に強く差別を感じたことがあるという人が15.6%もあった。差別の内容は、企業・事業者においては、戸籍、性別、身長の順に差別が強く存在する。労働者の意識として差別が著しいと感じるのは、健康問題であり、エイズ患者やB型肝炎患者に対する差別がある。女性については、身体障害、年齢、身体的特徴(身長、体重、容貌)などに関しての差別が存在するという(関連のコラムに「第112回 職場におけるセクハラと労働法改正の必要性」(2008年4月23日)がある)。
  このような雇用差別が存在するが、多くの労働者がこれに積極的に反対し、法的手段に訴えることはほとんどなく、差別を甘受しているというのが現状である。それでも、最近では雇用差別に関する事件が大きく報道されるようになりつつある。法的措置がとられる紛争も生じている。このとき、雇用差別事案を専門的に解決する機関の設置も必要になりそうである。 雇用機会均等を保障すべき政府機関において、意識が低いということにも大きな問題があるといえる。そもそも政府機関の公務員採用において雇用差別が最も強く存在すると考えられている。
  中国政法大学憲政研究所の蔡定剣所長・教授は、「一般に“差別”意識がまだ低い」という。実際にエイズ患者やB型肝炎患者とは一緒に働きたくないという労働者も少なくない。「雇用差別」という言葉自体が聞かれるようになったのもここ数年のことである。
  労働契約法に基づく地方立法、各地方の「労働契約条例」の制定が全国で展開され始めているが、雇用、労働に関しては、制度面以上に意識面においてまだまだ改革の途上である。


次回は4月22日(水)の更新予定です。

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