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LastupDate:2009/5/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第137回 独禁法施行後もなお行政独占の存在

(2009年5月13日)

  中国において独占禁止法が、2008年8月1日から施行されている。この独占禁止法により、2009年3月18日に商務部がコカ・コーラ社により中国の飲料メーカー「匯源公司」の買収計画を認容しない決定を下したことをこのコラムでも紹介した(3月25日No.134)。
  独占禁止法の起草、制定過程において大きな問題となったことに、中国の多くの企業が行政部門に直属しており、実質的な行政独占が存在するということがあり、この行政独占を果たして打破することができるだろうかということがあった。
  現実に独占禁止法施行後もなお行政独占は存在し、打破できないようである。
  中国国内の航空運賃が、2009年4月20日から各航空会社ともいっせいに同一基準で値上げされるとの報道があった。中国の国内の航空会社は、実際上同一の航空会社グループに所属している。これら航空会社が、一律に価格設定基準を改め、改定後は約10%の値上げとなり、かつ従来はあった割引率6割以上の航空券は廃止するという決定をした。この決定は、実際には「中国民航信息網絡股份有限公司(中国民航情報ネットワーク株式有限会社)」による「運賃価格システム調整」という実際上の価格操作という方法により行われた。このため、民間航空部門の責任者は、「運賃値上げではなく、航空運賃の体系の調整であり、販売方式の改善であり、消費者により多くのチケットの等級の選択を可能にするものである。」と述べている。価格カルテルという批判をかわす狙いがあったのだろうか。
  しかし、多くの消費者が、これは価格カルテルであると批判する。
  4月24日には、北京市消費者協会、北京市消費者権益保護学会、北京市工商行政管理学会および中国人民大学民商法律科学研究中心が共同で、航空運賃の値上げは航空会社グループによる価格カルテルであるとして、行政部門に調査を実施するように声明を発布した(北京晩報、2009年4月24日、http://news.xinhuanet.com/fortune/2009-04/24/content_11250393.htm)
  航空運賃はなぜ値上げされたのか。これは、2008年の航空会社の赤字総額は280億元もあり、この欠損が非常に大きいからに過ぎない。
  王福重・北京航空航天大学金融研究中心常務副主任は、「航空会社の赤字が膨大である原因は、そもそも会社の機関が巨大化し過ぎており、管理層が複雑であり、管理費用が多過ぎるからである。」「各航空会社がそれぞれ独立していれば、価格カルテルを行おうとしてもなかなかうまくいかないものである。価格カルテルに関する調査も行われるだろうし、カルテルを結んでも実行は必ずしも容易なことではない。競争が激しければ、カルテルに違反して値下げをする会社も出てきて、競争が発生することもあり、カルテルの維持は難しい。以前、カラーテレビ・メーカーが価格カルテルを結んだときにも、カルテル破りが発生し、うまくいかなかったという経験がある。会社相互間に競争が存在しないからこそ、価格カルテルが達成されるのである。」という(新華網、2009年4月23日、http://news.xinhuanet.com/fortune/2009-04/23/content_11239925.htm)
  市場が独占状態にあるとき、独占者の利益は消費者の損失である。消費者の権利意識、法律意識は高まってきている。行政独占は、いずれ打破されるときが来るだろうか。そうでないと外国企業、外資企業にとっても公平、公正な競争市場が形成されないことになってしまう。


次回は5月27日(水)の更新予定です。

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