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LastupDate:2004/5/12
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コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第15回 騒音被害に対する市民の訴え

(2004年5月12日執筆)



     2002年6月に北京市第二中級人民法院において、ある公害訴訟が争われた。一市民が高速道路建設会社を相手取って高速道路から騒音公害が生じているとして、損害賠償を求めた訴えに関して、原告勝訴の控訴審判決が下された。
   市民の権利意識の高まり、法院による市民の権利保護意識の高まり、法院の行政部門からの独立が感じられる裁判である。以下、この内容を簡単に紹介する。
   この訴訟は、北京市の豊台区に住む一人の小学校教師が、地域の交通騒音がひどく、正常な仕事、生活ができず、かつ窓が開けられずに、ついには仕事を休む状態になったとして、北京市首都公路発展有限公司に騒音から生じた損害の賠償、補償を求めた事件である。要求内容は、窓を2重にせよ、室内の騒音が昼間は60デシベル以下にし、夜間は45デシベル以下にせよ、損害賠償3,000元を支払え、騒音被害に対して毎月60元を補償せよというものであった。
   これに対して被告は、騒音公害は同社の責任ではないと主張した。この根拠は、高速道路は国の交通計画に基づく重要な政策であり、計画および建設は合理的である。北京市の京石高速道路建設計画時の交通量は5000台/時であるが、現時点でこの計画の範囲内であるというものであった。
   本件は、北京市第二中級人民法院の判決というところから明らかなように控訴審である。第一審で原告が勝訴したところ、被告が控訴したものである。これに対して控訴審でも原告が勝訴し、原告の主張がそのまま認容されている。
   北京市第二中級人民法院の判旨は、次の通りである。環境は、人類の生存および発展の基本的な条件である。国は、生活環境および生態環境を保護し、改善し、都市住民の身体の健康と生活環境の質を保障しなければならない。原告は、現在の住宅に入居以来、正常な生活は高速道路の騒音により甚だしく侵害されている。原告が入居している住宅の騒音は国の規定する騒音基準を超えていることは環境観測分析報告書から明らかである。
  高速道路建設は、被告が主張している通り、国の国土計画による。これが今、訴訟の対象になっている。少し前であれば考えられなかった訴訟である。また、仮に訴訟になっても法院が、無条件に行政よりの判断を下していたといえる。2004年3月の中国憲法改正により、(1)人権保護の強化、(2)人民主権の範囲拡大および権利強化などが規定された。「依らしむべし、知らしむべからず」は、通用しなくなりつつある。他の住民はどうするのだろう。



次号の更新は5月26日(水)ころを予定しています。

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