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LastupDate:2010/7/14
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第166回 賃金集団協議

(2010年7月14日)

  中国において所得格差が拡大していることは周知のとおりである。
  最近、業種別の所得格差の実態が発表された。国家統計局のデータによると、2008年に全20の業種分類のうち、最高収入の業種と最低収入の業種の格差は4.77倍となり、この格差は毎年広がっているという(工人日報、2010年7月6日)。
  最も所得水準が高い業種は証券業であり、最も低いのが牧畜業であるが、この差は15.9倍にもなる。上場会社の年度報告を見ると、208の上場国有企業の高級管理職と一般従業員の収入格差は、2006年の6.72倍から2008年には17.95倍と広がっている。
  また、GDPを構成している賃金、企業利潤、税収の構成比を見ると、賃金の割合が減少しているという傾向が見られる。全国の従業員賃金のGDPにおける割合は、2003年に13.3%であったのが、2006年には11%程度に減少している(前掲工人日報)。
  企業利潤が増加している中、また、企業の高級管理職の賃金が著しく高くなってきている中、一般従業員(労働者)の賃金がなかなか増えていないという現象がある。このことが最近の労働者による争議行為発生の原因の1つとして指摘されている。調和のとれた社会形成のために、如何に公平、公正な所得再分配制度を確立するかが、今日の中国の重要な課題となっている。
  そこで、今、大いに提唱されているのが、賃金集団協議である。一部の都市では賃金集団協議が実行されており、これにより従業員の賃金は、賃金集団協議を実行していない企業より10から15%高くなっているという。
  中華全国総工会(労働組合)の発表によると、2009年末までに全国で124.7万件の集団契約が締結されており、この集団契約により規律される企業数は211.21万社、従業員数は1億6196.42万人にのぼる(中国青年報、2010年7月3日)。中華全国総工会は、2012年内に基本的に工会を設立しているすべての企業で集団契約制度を確立し、賃金集団協議を全面的に実行することを目指している。
  中華全国総工会の責任者は、「全国の各級工会はさらに企業の類型別に指導を強化する必要がある。(1)生産経営が正常な企業には、賃金アップ率および福利待遇の協議を真っ先に実行するようにし、賃金の正常な成長システムを確立する。(2)生産経営が困難な企業には、賃金支払を保証するシステムの確立を優先して実行する。(3)国有企業、国有独資企業および株式会社には、労働および生産要素に基づく合理的な分配関係を確立するようにし、企業の賃金分配における一般従業員の賃金分配比率を高めるようにする。(4)賃金集団協議を実行することが難しい中小企業には、同業種、同地区の利益関係を同じくする従業員と連携して、業種性、地区性の賃金集団協議ができるようにする。」という(前掲中国青年報)。
  中華全国総工会は、2010年7月2日に2009年末までに全国の工会会員が1417.3万人増加し、うち農民工が798.3万人であり、工会会員総数は2.26億人に達したと発表した。
  今後、工会の機能が重要になる。この場合、企業経営者は、工会を単なる賃金集団協議の相手方であるだけであると考えてはいけないのではないか。米国においてさえも、労働組合がある企業において従業員参加型の経営が成功する可能性が高いという意見がある。企業経営者と労働組合の共同行動が、労使双方に共通の利益を実現させる。このために労使双方で「企業盟約」を締結するのがいいという主張があり、これを実施している米国企業もある。これからの時代の中国における企業経営を考えたとき、米国型の「企業盟約」も参考になるかも知れない。

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