コラムに関する感想
お問い合わせ
LastupDate:2010/7/28
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第167回 オリンパスが集団労働契約を締結

(2010年7月28日)

  中国進出企業が人事労務管理をして行く上で、集団労働契約の重要性を認識する必要がある。
  オリンパス(北京)販売サービス有限公司は、2010年7月22日に労働者代表と集団労働契約(中国語では、「集体合同」という。日本の労働協約に相当する。)を締結した(工人日報、2010年7月23日)。
  オリンパスは、中国に全7社の法人を設立しており、2007年4月にすべての中国法人に労働組合を設立させた。販売サー ビス有限公司に労働組合が設立されたのは、2008年2月であるが、オリンパス・グループの中で、販売サービス有限公司がトップを切って集団労働契約を締 結した。
  使用者側は、集団労働契約は、企業と労働者の共通の発展目標を確立し、労資のコミュニケーションを円滑にし、労資関係 の調和を図る上で有効なものであるという。労働者側は、企業の労働組合が福利厚生に関することばかりで、実際上の労働組合としての活動はしていないという 見方があるが、労働組合が設立されることで労働者との対話が可能になり、労働組合と企業が共同して、企業の適切な発展が図られるようになるという。
  2009年7月に労働組合側から集団労働契約締結の提案がなされた。その後、労資双方で協議が交わされ、北京市朝陽区 総工会(北京市朝陽区の地区労働組合)が集団労働契約のモデル書式を提供し、これをもとに更なる討論、協議を経て、2010年7月15日に最終合意に至っ た。
  中国において外資系企業を含めて多くの企業で労働組合の設立は進展している。しかし、集団労働契約を締結している企業 は、なおわずかにとどまっている。このような状況の中で、オリンパス(北京)販売サービス有限公司が集団労働契約を締結したことは、多国籍企業が中国の法 律を尊重し、労働者の権利を保護し、労使関係の発展と調和を重要視した模範的行為であると評価されている。
  ただ、集団労働契約の内容は、具体的にはどうであるのか。この点についての紹介はない。北京市朝陽区総工会が集団労働契約のモデル書式がどのようなものであり、これをどのように加筆修正したのか。筆者の関心事はこの点にある。
  とりわけ今日の問題として検討されなければならないのは、ストライキを如何に規整するかということである。そうである と、苦情処理手続きや団体交渉に関してどのようなルールを定めたのか、争議権を集団労働契約により認めたのかというようなことが気にかかる。
  現時点において中国の労働法には、このような問題に関する規定が不在である。総工会の集団労働契約モデル書式にもこの ような視点からの規定は存在しない。そうであると、企業が労働組合と集団労働契約を締結する場合には、この点について自ら規定をしていかないと、ストライ キへの対処という今日的な意義が薄れる結果となる。
  争議行為の正当性の判断基準ついては、日本においても法による規定の空白がある。しかし、正当な争議行為として認めら れるためには、一般に(1)主体、(2)目的、(3)開始手続き、(4)方法における正当性がなければならないとされている。争議行為にも正当な争議行為 と不正当な争議行為があるということである。これを規律するのが集団労働契約である。
  中国では、現時点において、労働者に争議権があるか否かについては、賛否両論ある。ただし、争議権があることを認める 意見が多数になりつつある。それでもこの場合、中国で当該分野の研究が進んではいないので、正当な争議行為と不正当な争議行為を区別しようという認識がな い。
  中国進出企業が、集団労働契約の重要性を認識した場合、日本の専門家にも相談するのが適当であると考える。また、依然 としてストライキが多く発生しているところ、中国政府としても労働者に争議権を正式に認め、そして正当な争議行為の要件について法制化する必要があるので はないかと考える。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2010 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s