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(2010年8月25日)
新規に中国企業と取引を始める、または合弁事業を行おうとする場合、取引先企業や合弁パートナーの信用調査をどのように行えば良いのか。企業にとって悩ましい問題である。 中国市場で偽物商品・劣悪商品が蔓延しているという報道が後を絶たない。企業による契約違反、脱税、密輸、多重債務、債務超過、二重帳簿、商業詐欺などが報じられ、企業の「信用貧困」、「信用危機」ということが言われている。 不完全な統計ではあるとういが、数年前の数字に次のようなものがある。 中国において毎年4万件の契約が締結されている。ところが、この契約の履行率は50%しかない。企業がこのために被っている経済損失は5855億元に上る。債務逃れによる直接的損失は約1800億元、契約詐欺による直接的損失は55億元、製品の劣悪な品質およびニセモノによる損失は少なくとも2000億元に達する。債務の付け回し(三角債)および現金取引の増加による財務コストが約2000億元である。経済損失は、合計1億元を上回るという。現実に統計を取ること自体ができるような性質のものでもない(学習時報、2010年2月21日)。 中国4大銀行に口座を開設している6万社の企業のうち、およそ半数の企業が不法に債務を逃れる何らかの行為をしているという。中小企業の23.5%は、銀行融資を不当に返済していない。 このような現象が、中国企業の信用を失墜させていることは間違いない。 こうした現象が存在する原因の1つに、中国で企業に対する信用評価に関する法律が存在せず、信用評価に関するシステムが構築されていないからであるという指摘がある。 信用調査会社や信用評価機関も設立され始めたばかりである。例えば、1998年に上海に「上海遠東資信評価有限公司」が設立され、2002年に瀋陽に「瀋陽資信評価有限公司」が設立されているなどである。このような民間の信用調査・評価会社が設立されることによって、徐々に企業が自らの信用を確保することが、企業の発展につながるという意識を持ち始めることになるであろうか。 そうであると、こうした民間の信用調査・評価会社が、政府などから干渉を受けることのない、どれだけ独立した、公正・公平な企業であり得るかということも問題になるだろう。 何をもって信用評価の判断基準とするかについても法律によって規定されている訳でもないので、信用調査・評価会社がどのような判断基準を設定するか、先進資本主義国の信用調査会社の経験を取り入れるということになるであろう。 信用調査・評価は、市場経済化を推進し、公正・公平な取引を行う上で不可欠の問題である。中国は、信用調査・評価を成熟させていく必要がある。
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