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LastupDate:2004/6/9
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コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第17回 中国で増える離婚

(2004年6月9日執筆)



    中国で、とりわけ都市で離婚が増えている。ある商人が、「離婚服務公司」(離婚サービス会社)の設立を申請したことが伝えられたのは、2001年秋のことであった。当時は、工商部門が許可をせずに会社登記はできなかったが、今であればどうであろうか。 現在は、ウェブ上で「北京離婚網」(http://www.lihun123.com)や外国人との離婚を専門に扱う「渉外離婚網」(http://www.lhabc.com)などが見られる。このサイトで離婚手続、関連法規・司法解釈、事例紹介などがなされ、離婚手続の代行サービスが行われている。
  このように離婚が増えたのはなぜか。解放前の中国は、封建社会であり、家庭内は権威による秩序が保たれ、男子の出生がきわめて重要とされる女性蔑視社会であった。解放後、「女性は天の半分を支える」といわれ、女性の政治および社会への参画は増えた。しかし、それでもなお離婚はある意味でタブーであったかも知れない。解放前同様に「単位」「家族」が重視され、これを通じて権威を維持しようとする傾向が強くあったからである。しかし、改革開放後、市民生活は著しく豊かになり、政治および社会へ参画し、その成果を上げている女性の権利意識は強くなった。離婚が、通常に認められるようになったことは、民主化の進展といえる部分もある。しかし、一方で、同情心のない家庭の増加という懸念もなくはない。この意味では、現在は、協力による秩序形成の過程と考えるべきなのだろうか。
   以下では、ある離婚裁判について紹介する(党傑・夏園園『法律基礎教程案例選編』北京工業大学出版社、2002年、75-77頁)。離婚において男女の権利(ここでは財産権=財産分与)は、どのように確保されるのだろうか。
   丁某(女。以下「X」という。)と康某(男。以下「Y」という。)は、同じ職場で勤務し結婚し、XY共同で住宅の分配を職場に申請し、職場から分配されたアパートに居住した。結婚後まもなくYは会社を辞職し、自ら会社を設立した。Yの帰宅は毎晩遅く、このために夫婦の間の口論が著しく多くなった。そこで、Xは、法院に離婚による財産分与の訴えを提起した。
  Xは、離婚に際して、(1)職場から分配されたアパートの所有権と、(2)Y会社の財産の半分を分与するよう主張した。
  これに対し、Yは、次のとおり主張した。(1)アパートがなければYは住むところがなく、故に所有権をXには与えられない。(2)会社の財産は、ほとんどYの労働により獲得したもので、Xは、会社設立時の資金の一部を支出しただけであって、会社財産の半分をXに分与する必要なはい。
   以上のXYの主張につき事実認定した法院は、以下のとおり判示した。中国婚姻法17条により夫婦の共有財産は平等に分与するものと規定されている。Yは、Xに会社財産価値の半分を分与せよ。アパートについては、規定によれば以下の優先順位で居住する権利を取得する。すなわち、(1)扶養子女のいる一方、(2)男女同等の条件下では、女性を優先、(3)疾病・傷害により生活困難な一方、(4)無過失の一方の順番である。本件においては、(2)に相当するのでXにアパートの所有権を与える。ただし、XはYに一時的補償金5000元を支払え。



次号の更新は6月23日(水)ころを予定しています。

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