コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2010/10/27
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第173回 戦略的新興産業の発展—有望な投資分野は?

(2010年10月27日)

  国務院は、2010年10月10日に「戦略的新興産業を迅速に育成・発展させることに関する決定」(以下、「決定」という。)を発布した。
  戦略的新興産業とは、環境保護、新材料、生命科学・バイオテクノロジー、新世代情報、最先端設備製造、新エネルギー自動車の各産業分野をいう。2015年までにこれらの戦略的新興産業を基本的に構築し、当該産業のGDPに占める割合を8%に引上げ、2020年には15%にまで引き上げようとする。
  戦略的新興産業を発展させようとする背景は何か。決定を執行する上での障害はないだろうか。
  今、中国はどのような経済・社会環境にあるのか。
  戦略を転換し、社会の安定を図る重要な時期にさしかかっている。このように言うのは、工業化および都市化の急速な発展、人口・資源・環境圧力に直面し、これまでの発展モデルには限界が見られ、経済構造および資源環境の矛盾が大きくなって来ているという事実があるからである。
  具体的には次のとおりの問題が指摘される。
  中国の粗鋼生産は5.68億トン(2009年。以下、データは2009年末時点のものである。)、セメント16.5億トンでそれぞれ世界の総生産量の43%、52%を占め、ほとんどが国内で消費されている。一次エネルギーの消費量は31億トン(標準炭換算)で世界のエネルギー総消費量の17.5%を占めている。しかし、中国のGDPは34億元(約4兆7000万ドル)と世界の8.7%でしかない。このことは、中国のエネルギー消費効率が悪く、エネルギー資源が枯渇しつつあるところ、現在の産業発展モデルはいずれ行き詰まることになる。
  世界の9%しかない耕地面積で世界の人口の20%を養っている。2030年には総人口が15億人になると予想されており、この場合には1人あたりの耕地面積は現在から相対的に10%減少することを意味する。中国の環境汚染も深刻である。
  そこで、社会の安定を図る上でも戦略的新興産業の発展を図る必要があるというものである。
  ただ、この計画を実現する上では、以下のような様々なボトルネックもある。
  第一に、(1)各地方の経済発展レベルが不均衡であり、一律に戦略的新興産業を発展させることはできそうにない。これよりも低いレベルの産業を発展させたい地方もある。第二に、(2)産官学の共同体制が構築されていない。知的財産権の保護にも欠けている。第三に、(3)基礎となる産業・技術レベルも十分に整っているとは言えない。第四に、(4)市場経済の力量にも問題がある。第五に、(5)財政・金融政策による支援体制も不備である。第六に、(6)外国政府・企業との国際協力が不可欠であるが、上記の問題故に十分な協力をあおぐための体制が整っていない。
  それでもなお第12次5カ年計画に入るこの時期は、経済・社会環境の転換期にあり、社会の安定を図る重要な時期である。国を挙げての取り組みになるだろう。外国企業が対中投資をする際には、戦略的新興産業が有望な分野であるということは言える。


北京中関村には情報産業が集積している。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2010 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s