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(2010年11月15日)
中国のジニ係数が0.5に達しているとうい数字が中国の経済学者や研究員によって示されている。国際的には、0.4を超えると警戒水準に入ると言われている。 このような数字が示されずとも中国において所得格差が拡大していることは、共通に理解されていることである。一部の富の独裁者がおり、一方で発展から取り残された、または搾取されていると感じる貧困層がいる。 所得格差の拡大は、中国にどのような問題をもたらすのか。今後、格差縮小のために何をしなければならないのか。 所得格差の抱える問題として、(1)一般市民・労働者に富が公平に分配されていないということ、(2)都市と農村の不均衡、(3)業種間の不均衡、がある。 第一に、(1)富の分配の不均衡ということに関しては、次の問題が指摘できる。2010年の中国の財政収入は8兆元にのぼり、GDPは日本を抜いて世界第2位になることが確実視されている。しかし、1人あたりのGDPは4000ドルに満たない。およそ日本の10分の1である。 このGDPから見たとき、今年の日系企業におけるストライキ発生の要因の1つとして注目された問題がある。それは、GDPに占める労働収入の割合が42%しかないということである。先進資本主義国では、これが60%を超えているのと比べると、随分と低い数字である。さらに、先進資本主義国において、医療、社会保障および教育などに費やされる財政支出が50%になるのに、中国では28%でしかない。国や企業が富と蓄えているのに、この富が労働者には回ってこないということがストを引き起こした1つの要因として指摘されている。 第二に、(2)都市と農村の不均衡の実態は次の通りである。1978年の改革開放が始まった当初には、都市と農村の所得格差は1:2.36であったのが、2009年には1:3.33となっている。農村の収入は、1980年代には年間10%程度の伸びを確保していたが、1990年代以降は5%を下回っている。沿海都市と内陸部農村の所得格差には、著しいものがある。 第三に、(3)90年代末以降に顕在化してきた問題に業種間の格差がある。最も所得水準の高いのが金融・保険業および交通・運送・郵便、通信業の業種である。これらは、かつての行政部門が民営化する中で、それでも独占してきた業種である。行政独占という言葉がある。これに対して、最も所得水準の低いのが、皮革、家具、玩具などの製造業である。業種間の所得格差も、スト発生の要因の1つと考えられる。 以上のような所得格差の拡大は、中国政府として座視できない。今後、格差縮小のために何をしなければならないのか。 最も有効な手段が、戸籍制度改革である。現在の都市と農村の別にある戸籍を取り消すことである。これは、常に話題に上っていることであるが、中国政府は遅々として決断をしない。内陸部の農村を都市化することや社会保障制度、養老保険を農民にも加入させることなどで対処しようとしているが、戸籍制度改革という抜本的な改革には至っていない。 以上の問題を放っておくに等しい政策のままであると、富の独裁者に対して貧困層の反乱が生じることになるのではないか。
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