コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2010/12/08
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第176回 中国工会(中国の労働組合)運動史

(2010年12月08日)

  2010年1ー8月に全国の法院が受理した労働紛争件数は、20.74万件であった。2009年には年間で31.86万件であったから、2010年の法院の労働紛争事案受理件数は大幅に増加しそうだ。こうした中で、工会は、如何なる役割を果たそうとするのだろうか。
  中国の工会運動史をごく簡単に振り返る。労働紛争が増加し、工会の役割が重要になる中、過去の工会の運動の歴史を知ることは、中国における工会とは如何なる性質のものであるのかを検討する上で役に立つ。  
  (1) 戦前の労働者階級と工会
  1911年から1917年の間に労働者階級が工会を設立。1919年の「五四運動」以降、各地の共産主義小組がマルクス主義に影響された工会を設立。1921年、共産党設立。
  1924年の第一次国共合作の後、1925年に海員工会、鉄道工会、広州労働者代表大会の共同主催で広州において全国労働大会が開催され、「中華全国総工会」が正式に成立。各省市に総工会が設立された。工会は、対英国戦線に参加。工会は、革命武装をし、ソビエト政府の労働法に基づき、労働者の政治・文化・技術学習を組織するものであった。
  (2) 第二次世界大戦後、解放まで
  政府は、国営・公営企業の工場管理委員会と「職工代表会議制度」を支援し、「戦時労働保険条例」を制定し、労働者の集団福利および文化事業を支援した。
  (3) 中華人民共和国成立後の工会の任務
  中華人民共和国成立後の工会の任務は、全国の労働者を組織して中国革命の基本問題である政治啓蒙教育、愛国主義、文化技術教育などを行い労働者の階級意識および文化程度を高めることであった。1950年に「工会法」を公布。
  (4) 社会主義建設時期の工会の任務
  社会主義建設時期の工会の任務は、疲弊した国民経済を回復・発展させ、教育と組織工作を深化させることであった。しかし、1958年からの人民公社の発展により、およびその後の文化大革命時期(1966年から1976年まで)を通じて、工会は壊滅させられた。工会の「経済主義」が誤りであるとされた。工会は、「都市人民公社」に吸収された。
  (5) 改革開放以降の工会の任務
  工会は、行政機関となり、労働者から乖離した存在になっていたとの反省から「労働者の家」になるとの方針のもとに再生。1994年に「労働法」を制定。工会は、労働者の適法な権利を保護し、労働関係を調整し、社会主義市場経済に適応した労働制度を確立し、維持することを任務とした。
  改革開放後、郷鎮企業・外資系企業・私営企業における工会活動の強化が図られることになる。
  ここにおいて、工会の重要な任務は、労働者の適法な権利を保護し、労働者の思想政治教育を強化し、投資者と共同して企業の発展を図り、企業が国の関係法律を遵守することを監督し、団体交渉および集団契約制度を実行することによって、安定的協調的労働関係を確立することであった。
  以上の工会の運動史をみると、工会と共産党、政府機関との関係において、工会は次の業務を遂行する役割を担ったものであると言うことができる。
  第一に、(1)党と国の全局的な活動の一部をなすものであり、必ずこれに服従・服務しなければならない。工会は、党と国の任務の大局を認識・把握し、大局を考慮して工会の問題を解決しなければならない。
  第二に、(2)労働者の適法な権利と利益を保護する。
  外資企業が、工会を設立し、これを企業内の機関として機能させる上では、工会が上記のような性質のものであることを認識しておく必要がある。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2010 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s