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Last Update:2011/1/12
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第178回 天津鑫茂科技投資集団、EU企業買収断念

(2011年1月12日)

  天津鑫茂科技投資集団は、2010年12月にオランダのDraKa Holding NVの公開買付けによる買収を表明していたが、2011年1月6日にこの買収案件を断念する声明を発表した。
  中国企業によるEU企業買収は容易ではない。その理由は、どこにあるのか。
  天津鑫茂科技投資集団は、鑫茂集団の参加企業である。鑫茂集団は、1992年に設立され、深圳証券取引所に鑫茂科技有限公司の名義で上場されている。鑫茂集団は、主に光ケーブル、風力発電、建築、不動産開発関係の事業を行っている。
  DraKa Holding NVは、オランダの会社で、通信、エネルギー、機械を中心とするメーカーである。
  鑫茂集団は、公開買付け発表に際して、「両社の専門性をより活かして、DraKa Holding NVをさらに発展させることができ、かつ鑫茂集団は、DraKa Holding NVの技術力、市場シェア、市場における知名度を十分に活用することができる。DraKa Holding NVの中国市場、およびその他新興国におけるにおけるシェア拡大にも有利である。」と述べていた(人民日報 2010年12月21日)。
  天津鑫茂科技投資集団は、1株20.5ユーロでDraKa Holding NVの発行済み普通株式のすべてを買い付けるという計画であった(合計金額は約50億人民元)。そして、2011年2月14日までにオランダ証券監督管理機関AFMに公開買付け目論見書を提出するとしていた。
  この公開買付けによる買収表明に、まずイタリアのPrysmian SpAが10億ドルの現金と株式交換方式による買収計画を発表し、またフランスのNexans SAも公開買付けに競争に加わるとの表明をした。
  EU企業の中国企業によるDraKa Holding NV買収計画への対抗は、当該事業分野における利害関係が大きいことが理由である。DraKa Holding NVに成功した企業が、重要な戦略産業である光ケーブルに関して世界のトップ企業になる。
  しかし、これはある程度までタテマエ上の議論であるのかも知れない。EU行政委員会委員のAntonio Tajaniは、EU以外の外国企業によるEU企業買収について規制を強化する必要があると言っている(The Wall Street Journal 2011年1月7日)。DraKa Holding NVは、米国軍からの光ケーブル事業の請負企業であるということもあるだろうか。Antonio Tajaniは、EUの固有技術、ノウハウが国外に持ち出され、または国の安全を脅かされないようにしなければならないとも述べている。
  The Wall Street Journal 紙のJohn W. Miller は、「EUは、タテマエ上は保護主義には反対する。しかし、現実には、中国との貿易摩擦が拡大し始めた時から、中国企業によるEU企業買収が難しくなりつつある。特許やノウハウの中国への流出に対する懸念、警戒心が強まっているようである。」と言う(The Wall Street Journal 2011年1月7日)。
  鑫茂集団は、DraKa Holding NVの公開買付けについて、中国政府の認可を得ることが難しく、Prysmian SpAによる買収計画発表があったことから、この買収案件を断念すると発表した。

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