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Last Update:2011/1/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第179回 米国企業買収へ動く中国

(2011年1月26日)

  中国工商銀行は、2011年2月21日に香港の東亜銀行の米国現地法人、バンク・オブ・イーストアジア(USA)NAを買収することに関して、同行と合意した。
  中国企業による米国企業買収が増えている。中国企業の対米投資の狙いは何か。これによる米中摩擦は生じないだろうか。
  中国商務部は、2009年の中国企業による対米投資額が560億5000万ドルに達したと発表した(2010年11月1日)。2002年から2009年の間に中国の対外投資は年平均54%の伸びを示している。その多くが民営企業によるものである。
  中国企業の対米投資は、M&A、合弁事業、中小企業買取、工場(法人)設立といった方式で行われている。
  中国国際商会は、会員300社のうち70から80%が海外投資をしており、このうち20から30%が対米投資をしていると言う。海外投資の狙いは、世界金融危機後の輸出環境が悪化および人民元高という問題もあるが、米国企業の先端技術獲得ということが主たる狙いである。
  中国政府は、2020年までにGDP に占めるR&D支出を現在の1.7%から2.5%にし(米国は、現時点で2.7%である。)、技術経済立国を目指している。そして、世界経済の主導的地位を得たいとしている。このためには、最先端技術(とりわけ、半導体、エネルギー、原子炉、航空電子工学、農業、浄水など環境保護技術)の獲得が不可欠である。
  そうであるとき、米国企業を買収すれば、ステイクホルダーとして知的財産権を獲得しやすくなるということがある。
  このために政府は、様々な政策を打ち出している。例えば、中国人民銀行が、2011年1月13日に人民元による対外直接投資を解禁したことがある。実務上は、国家外貨管理局は2011年1月1日に施行した新制度で、輸出企業が国外に開く銀行口座を同局に登録すれば、輸出代金をその口座に直接振り込めるようにするというものである。中国銀行は2011年1月に米国の支店で人民元の取引業務を開始したことを明らかにした。さらに、中国工商銀行によるバンク・オブ・イーストアジア(USA)NAの買収は、米国における中国のプレゼンスを高め、中国企業による米国企業買収にも利することになるだろう。
  2011年1月に米国を公式訪問した胡錦濤・中国国家主席をオバマ米大統領との会談では、実利的に「経済・貿易、エネルギー・環境、科学技術などの分野で交流や協力を強くすることで合意」した。
  しかしながら、米中は、政治・経済体制の違いからコンフリクトは生じがちであることは否めない。最大の問題は、貿易や投資といった経済的側面で世界経済のリーダーとなりたい中国は、政府が民間企業の行為を直接的に支援する政策をうちだすことであろう。人民元の相場操作問題に関して、大きな対立がある通りである。最先端技術の移転ということでは、知的財産権保護に対する姿勢、取り組みの欠如という問題がある。

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