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LastupDate:2004/6/23
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コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第18回 「特権は権利よりも強し」は打破できるか

(2004年6月23日執筆)



    2004年4月に北京で「転換期の非政府組織の発展について」というシンポジウムが開催された。このシンポジウムには、中国(海南)改革発展研究院、国務院発展研究中心、国家発展改革委員会、中国社会科学院、中共中央党校、中国国際民間組織促進会、NPO信息諮詢中心などが参加した。
   この会議では、非政府組織(中国においては、この非政府組織をNGOというよりは、NPOというほうが適当である。)の機能、発展の現状、管理体制などについて議論された。
   今後、中国においてもNPO法人の機能に対する期待が高まりそうであり、NPO法人を積極的に設立、支援していこうとする意向が見られる。これは、NPO法人に(1)政府と社会の繋ぎ役になってもらい、(2)住民に対する行政サービスの向上、行政改善を図る必要性が認識されているからであると考える。
   現時点における中国政治経済の最大の問題は、(1)行政効率の悪さと(2)公平な競争の欠如ということにある。 第一に、行政効率が悪いのは、行政部門が多く肥大化しているからであり、このことが行政部門の許認可および経済活動への干渉を過剰にしている。このため経済活動においては、手続に時間がかかり、行為が規範化されないという弊害を生み、企業の投資コスト(例えば許認可手続項目が非常に多く、手数料も多い。)を高め、ひいては企業の経済活動に脱力感を与える結果となっている。 第二に、公平な競争の欠如ということに関しては、行政独占、政府による不合理な行政費用の徴収、入札における特定企業などへの便宜供与がある。とりわけ問題とされるのは、行政独占の問題である。次のような不合理な事例がある。中国国家郵政局が2001年の米国での炭疽菌事件を受け、「国家安全」を口実に国際宅配便の規制強化に乗り出した。国家郵政局は2001年末から2002年3月にかけて営業中の各社に対して改めて郵政局で所定の手続をするよう求めた。今後、業務の対象は郵便物1件あたり500グラムを超えるものに限り、価格は郵政局の料金より高く設定することとしている。中国の国際郵便物は、日本のOCS、米国のDHL、UPSなど外資系の合弁企業が市場の3分の2を占める。郵政局の市場占有率は年々下がっていた。そこで、中国は、米国での炭疽菌事件を口実に上記の規制を発布したのではないかと考えられている。
  すなわち、「特権は権利よりも強し」という状態が存在する。 この状態を打破することができるか。このための手段として、競争法(日本の独占禁止法に相当する。)の制定やNPO法人の設立が議論されているところである。しかし、この議論に住民の参加はない。全てにおいて政府主導型であるといえる。 このことを考えると、「住民は拠らしむべし、知らしむべからず」という政府の意識改革が真っ先に必要であるといえる。住民の権利意識は高まっているが、対行政ではまだまだ発言権が与えられていない。住民参加型の行政改革が必要である。



次号の更新は7月14日(水)ころを予定しています。

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