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Last Update:2011/4/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第184回 市民参加のリアリティー

(2011年4月13日)

  日本においては、まちづくり条例の制定といった側面で市民参加(住民参加)が随分と進んでいると考える。しかし、この度の東日本大震災発生後の各行政機関の対応ぶりを見ていると、立法や行政面でもっと広範囲に市民参加のあり方が検討される必要があると感じる。
  中国において市民参加の現状はどうであるのだろうか。
  中国においては、社会主義市場経済の進展により、1990年代半ばから市民参加という問題が、社会のホット・イッシューとなってきている。
  2007年10月に開催された中国共産党第十七回全国代表大会の席上において、胡錦濤国家主席は、その大会報告で「国のあらゆる権力が人民に属することを堅持し、…公民の秩序整然とした政治参加を拡大させ、人民にもっと広い範囲で働きかけ、法による国の事務や社会の事務の管理および経済、文化事業の管理を行わせる。…民主制度の健全化をはかり、民主の形態を充実させ、民主のルートを広げ、法にもとづいて民主的選挙、民主的政策決定、民主的管理、民主的監督を実行することによって、人民の知る権利、参与権、意思表示権、監督権を保障すべきである。…政策決定の透明度と市民参与の度合いを強め、市民の利益と緊密につながる法律・法規と公共政策を制定する場合、原則として公聴会で意見を聴取する。」と市民参加の拡充について言及している。
  胡錦濤国家主席の報告における市民参加の概念は、(1)立法分野における公聴会の開催、(2)環境保護、都市計画、公衆衛生、公共事業など行政施策の策定における参与、(3)町村レベルにおける直接自治が基本的なものである。
  では、現実にはどのような場面で市民参加が見られるか。現実に機能しているのは、(1)環境・公衆衛生問題を含んだ都市計画づくりの際の公聴会の実施、(2)町内会、または工場や学校などの職場単位における事業計画づくりといったレベルである。
  都市計画づくりの際の公聴会とても、実際には形式化していると言われる。地方政府と企業が結託しており、不適法な計画でもごり押しされ、形式的な公聴会は地方政府や企業に都合のよい都市計画を実現させるための補助的機能を果たしているようなものだとの批判もある。
  このような問題があるのは、(1)市民参加を規定する具体的な立法が存在せず、(2)政府の情報公開が不十分であり、(3)市民自身が立法や行政に参加することに関して未経験であり、知識が少ないということに起因する。
  例えば、市民自身の発想で町づくり条例のようなものを制定しようとしたとしよう。市民が自ら率先して事を始める。しかし、議論をして行く過程で住民同士や住民と企業、その他様々なステークホルダーが出てくる。そうすると利害関係の調整をどうするかといった問題が生じてくる。また、具体的な行政事務手続の不慣れという問題も明らかになってくる。このとき、住民のサイドに配慮するという行政機関が関与してくることになり、結局は徐々に市民の手を離れて、市民の意向を十分に配慮するとはいいながら行政指導の条例が作られることになってしまう。
  このことは、日本においても同様なのではないか。政府は、情報公開のあり方を考え、透明度を高め、市民参加のための具体的な立法、市民にも分かりやすい立法をしていく必要がある。また、市民もあらゆる場面で当事者意識をもち、知識をもっと高める必要がある。

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