コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2011/5/11
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第186回 中国の対外直接投資(ODI)

(2011年5月11日)

  中国政府は、中国企業の対外直接投資(ODI、Outward Foreign Direct Investment)を支援するため、2008年には中国の商業銀行がクロスボーダーM&Aのために融資することを認めた。また、2009年に商業部は、中国企業による対外直接投資の許認可権限を地方の出先機関に委譲することとし、ODIを実行しやすくする政策をとっている。
  中国企業が、ODIで獲得しようとするものは何か(直接的には中国企業だが、間接的には中国政府の狙いでもある。)。
  第11期全人代第4回会議(2011年3月)の政府活動報告では、速やかに「走出去」戦略を実施するとして、以下の通り述べている。
  「国際エネルギー資源の開発および加工に関する協力を深化させる。国外で技術研究開発投資を行うことを支持し、製造業分野の優良企業が有効な対外投資をし、国際的な販売ネットワークおよび著名ブランドを確立すること奨励する。……徐々に我が国の多国籍企業および多国籍金融機関を発展させ、グローバル経営のレベルを向上させる。」
  現時点においては、ODIを実行している大半の企業は中央企業(国務院国有資産管理委員会が大株主の国有企業)である。当該企業が、2009年では全体のODI(金額ベース)の68%程度を占めている。一方、私営企業は全体の0.6%でしかない。しかし、今後は、私営企業によるODIが増えてくるものと考えられる。
  中国企業によるODIは、日本にとっても重要な位置を占めつつある。2010年の中国(香港を含む)の企業や投資ファンドの出資を含むM&Aは37件。米国企業によるM&Aは35件であり、中国が米国を抜いて、対日投資国の第1位になった。
  帝国データバンクは、2010年6月に「中国企業による日本企業への出資実態調査」を行った。この調査によると、中国企業が出資する日本企業は611社となっており、2005年6月の233社に比べて2.6倍に増えている。業種別には、卸売業が323社と全体の52.9%を占めていた。次いでサービス業が136社、22.3%、製造業69社、11.3%である。中国企業の出資を受けた企業は、年商10億円未満の企業が約70%を占めており、対象は中小企業が多いということが言える。
  経営不信の日本企業が、中国企業に買収され、従業員もそのまま雇用され、経営完全が図られるといった投資が少なくない。現時点においては、敵対的な買収はほとんどなく、Win-Winの関係が成立している。今後は、M&A以外に就業機会などをもたらすグリーン・フィールド投資に対する期待が出てくることになるかも知れない。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2011 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。
s