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Last Update:2011/6/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第188回 康師傅:国家発改委の価格据え置き指導受諾後に値上げ

(2011年6月8日)

  国家発展改革委員会の価格調査チームは、2011年3月30日に製品価格の値上げを示唆していたカップ麺の大手「康師傅」に対して立ち入り調査を実施した。この調査の結果、国家発展改革委員会は、康師傅に対して値上げを見送るように勧告し、康師傅も勧告を受入れることを表明していた。
  ところが、康師傅は、4月1日からコスト上昇を理由として、カップ面の価格を0.5元値上げした。値上げ率は14%であった。
  ニールセンの2010年12月時点のデータによると、康師傅の即席麺の販売量および市場シェアは、それぞれ41.6%、55.8%を占め、カップ麺に関しては69.7%を占めている。
  最近の原材料コストの上昇で利益率が減少していた。2010年の純利益は平均13.2%であったところ、2011年1月には10.1%に減少してきていた。そこで、2010年11月から各種の即席麺の値上げを実施していた。4月の値上げで半年内に3回目の値上げが行われたことになる。
  今回のカップ麺の値上げは、利益率を2010年の13.2%より1ポイント程度高くすることを目論んだものであった。しかし、国家発展改革委員会は、このような値上げは不適当であると判断したのであった。
  日用化学製品においても同様に国家発展改革委員会による価格調査が行われ、メーカーに対して値上げ見送りの勧告がなされたことは周知の通りであろう。
  ユニリーバは、3月21日から何回にもわたってメディアを通じて、シャンプーや洗濯石けんといった化粧品など日用化学製品を10%程度値上げするということを発表した。この行為は、市場価格を混乱させる行為であるとして、上海物価局は、ユニリーバに200万元の罰金を科すという行政処罰を行った。ところが、5月にユニリーバは、一部製品について10%程度の値上げを実施した。
  価格法の規定によれば、製品価格には、市場調整価格、政府指導価格および政府指定価格の3種類があり、大多数の製品およびサービスは市場調整価格であり、政府指導価格および政府指定価格が用いられることはごく僅かしかない。
  即席麺やシャンプーなどの製品は、市場調整価格により決定されるものである。
  しかし、温家宝は、3月の全人代における政府活動報告の中で、物価の安定は各マクロ・コントロールにおける重要な任務であると述べ、インフレ抑制の方針を打ち出している。こうした政策的背景が、国家発展改革委員会の価格調査実施に現れている。
  市場経済の下では、企業は、コストや需給を見極めて価格を決定するのが当たり前であるという意識は、消費者にも根付いている。上記製品には代替製品が皆無ということもないので、あまりに高ければ他の商品を買うという消費者もいる。
  企業からすれば、政府関係部門が、価格法、独占禁止法を適用する基準が分かりにくいということも問題になる。康師傅やユニリーバが一時勧告を受入れ、罰金も支払いながら、それでも値上げをし、政府はこれを黙認している。そうであれば、勧告の法的効果もないということである。
  インフレ対策に有効な政策は、やはり金融政策に委ねられるということになりそうである。

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