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Last Update:2011/6/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第189回 汶川地震後の復興建設プロジェクト監査結果

(2011年6月22日)

  審計署(会計検査院)は、2011年6月17日に汶川地震後の復興建設プロジェクトの監査結果を発表した。
  復興建設プロジェクトは、四川省、甘粛省、陜西省の主要被災地3省および同被災地の支援都市である重慶市、深圳市など20都市において合計2万2500プロジェクト、計画投資総額6900億元に及ぶ。審計署は、このうちの1404プロジェクトについて、2010年6月から11月までの間に調査員を派遣し、監査にあたっていた。
  この結果、36のプロジェクト、16の施工単位、11の施工管理単位に規則違反があったとした。規則違反金額は、1.88億元であった。
  主な不正行為は、以下の4点である。
  第一に、(1)プロジェクトのフィージビリティ・スタディまたは建築設計、環境アセスメントの許可を得ず、土地の収用手続をせず、工事着工許可を得ないままに工事を始め、かつ、勝手に設計を変更し、検収を受けないままに使用を開始するという行為である。
  第二に、(2)規定の入札をせず、直接に施工単位を指定し、または談合で施工単位を決定するなどの行為である。
  第三に、(3)施工前の準備が不十分で、施工後に設計変更をし、建設内容を任意に増やし、建設規模を拡大し、多額の工事代金を請求するという行為である。審計署の監査結果によると、これで総工費が2.73億元増えているという。
  第四に、(4)建設資金を規定通りに記帳せず、会計処理を規定通りに行わず、資金の不正使用、流用をするといった行為である。この金額も1.88億元にのぼる。
  審計署は、規則違反金額1.88億元は、全体の投資建設計画金額の2パーミルでしかなく、総じていえば、工事の質も予算の使用効率も良く、重大な違反行為はないと評価している。
  しかし、審計署のいう規則違反金額1.88億元の内容は、報告からは明らかではない。上記(3)の総工費2.73億元の増加、(4)の資金流用1.88億元などが、規則違反金額には含まれていない。そうであると、実際には不正行為による損失はもっと大きくなる。
  別の統計数字ではあるが、最高人民法院の年度報告によると、2010年に審理・結審した各種経済犯罪は3万150件であり、対前年比20.5%も増加している。
  最高人民検察院は、市場経済の発展に伴って発生し、経済犯罪が増加し、多様化してきていることから、2010年5月18日に最高人民検察院と公安部の共同で「公安機関が管轄する刑事事件立件訴追基準に関する規定(二)」を発布し、経済犯罪に関する取締りを強化している。ここでいう経済犯罪とは、市場経済秩序を乱すもので、密輸、通貨偽造、手形詐欺、特許侵害、インサイダー取引、融資詐欺、脱税などである。
  汶川地震後の復興建設プロジェクトにかかわって行われた不正行為も、この経済犯罪の範疇に該当するものがあるのではないか。
  今、中国で市場経済秩序を守り、公正な経済活動が行われるようにするために、行政法と刑事法の連結を図り、社会の矛盾を解決する手立てが考えられている。

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