コラムに関する感想
お問い合わせ
LastupDate:2004/7/14
トップチャイナウォール
コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第19回 中国人のわがまま、無秩序、自己中心 
VS. 日本人の従順、杓子定規

(2004年7月14日執筆)



    ある旅行社主催の北京万里の長城見学のバス・ツアーで、次のようなトラブルがあった(楊李、劉延嶺偏『生活経営消費者権益法律保護案例精析』中国政法大学出版社、1996年、370頁)。
   この観光バスは、ツアー客を乗せて万里の長城に向かった。向かった先は、新しく観光スポットとなった××公園。ここは、万里の長城の代表格である八達嶺の南に位置し、長城への別の入り口になるところである。 バスが公園に着いたところ、観光客が騒ぎ出し、「公園など見たくない。通常の八達嶺の入り口まで行け。」といい始めた。これに対して、ツアー・ガイドは、「行きたい人は勝手に行きなさい。バスの出発時間に間に合わなければ、置いていきますよ。」と強い調子で反論した。観光客は、渋々応じた。この結果、観光客は公園の入場料25元のほかに、さらに万里の長城への入場料15元を支払わなければならなかった。
   さて、このケースを見て、どのように感じるだろうか。
  第一に、観光客の言い振りはどうだろうか。通常、旅行社主催のツアーであれば、コースなどの指定があり、これに同意の上、ツアーに申し込むのではないか。そうであるなら、目的地で突然、行き先の変更を要求する観光客は、勝手であり、わがまま、無秩序、ルール無視ということにはならないか。
  第二に、ツアー・ガイドの言い振りはどうだろうか。顧客の要求を無視し、顧客とも思わない態度で口答えする。自分の都合第一主義ということがいえそうだ。
  最近、日本の地方都市や旅行社は、中国人観光客を受入れるようになった。金持ちの中国人が増えているからだが、少し前のテレビの放映を見て、類似の状況が見られたような気がする。中国人観光客は、旅行社のスケジュールなどお構いなしに富士山を見に行きたいなどの要求をしている。日本では、旅行社が右往左往させられることになる。この観光客が日本人であれば、従順に従うであろうし、この従順さは旅行社の当初からの手配であるから、規則とおりにしなければならないという意識であり、ある意味で杓子定規さということもいえよう。顧客第一の旅行社であれば、ツアー客の要求を何とか満足させようと犠牲を払うころもあるだろう。 しかし、これが例えば、中国の日系企業内の中国人従業員による規則にはない要求であったらどうか。日本人マネージャーは、間違いなく規則とおりの判断をし、中国人の勝手さ、わがままをなじることになろう。
  以上の対応について比較すると、中国人の「わがまま、無秩序、自己中心」に対して、日本人の「従順、杓子定規、犠牲的精神」ということになりそうである。中国人と日本人の対応の何れが正しく、または正しくないということではない。ただ(紙幅の都合上、詳しくは述べられないが)、日中合弁事業などにおける日本人マネージャーの心得として、時には「理の嵩じたるは非の一倍」ということもありえると考えておくべきであろう。正しいから何が何でも貫徹すべきだといえるか否か。理も度が過ぎれば、かえって非に陥ってしまうことがありえる。また、経済、企業の発展過程の創意工夫は、意外に「わがまま、無秩序、自己中心」というところから生まれることがあるのかもしれない。



次号の更新は7月28日(水)ころを予定しています。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002 GLOVA-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はGLOVA-Chinaの商標です。