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Last Update:2011/7/20
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第190回 ネスレによるキャンディー・メーカー「徐福記」を買収計画

(2011年7月20日)

  ネスレ(スイス)は、2011年7月5日に中国最大の菓子メーカーの徐福記国際の買収に向けて予備交渉をしていることを明らかにした(The Wall Street Journal 2011年7月12日)。一方、徐福記国際は、7月11日に同社の公式サイト上で公告を掲載し、ネスレと正式に提携合意に署名を行ったと発表した(人民網日本語版、2011年7月13日)。
  徐福記国際はシンガポールに上場しており、時価総額は32億シンガポール・ドル(約2100億円)である。ネスレは17億ドルで徐福記の60%の株式を取得し、徐福記の創始者である徐一家が40%を保有する計画である。
  調査会社のユーロモニターによると、中国のチョコレート、キャンディー、ガムなどの菓子市場は、2005年から2010年までに63%拡大し、92億ドルの市場になっている。しかし、1人当たりの消費量は米国の6分の1でしかない。そこで、まだまだ市場拡大のチャンスがあると見込み、M&Aを提案したものである。
  ネスレは2020年までに、同社の総売上高に占める新興市場の比率を45%とする目標を掲げているが、現在のところ約33%のみにとどまっている。一方の徐福記は、その製品が主にキャンディーや菓子類に集中し、利益率の高い製品開発は遅れており、事業拡大には製品の拡充を図る必要があるが、ネスレとの業務提携により、これが可能となる。
  ネスレは、1980年代の初めに我が国政府と黒龍江双城乳製品の生産プロジェクトについて協議を始め、10年後になってやっとプロジェクトがスタートし、ほんとうに急速な発展を遂げ始めたのは1990年代末になってからであった。
  このように時間をかけたのは、ネスレが「中国の農場が乳牛を改良するのを助ける。」ことをしたかったからであるという。ネスレ・コーヒーの中国における生産も同じような過程を経ている。東莞ネスレが設立される前に1年半の交渉が行われ、会社の稼働後も決して急ぐことなく、雲南省のコーヒーの栽培の援助計画から始まっている。このほか、ネスレの水プロジェクトも水源の検討に3年が費やされた。
  こうした事業計画が中国で高く評価されている。
  ネスレは、世界中でその他企業のM&Aを行っている。中国においては、「買収狂」と呼ばれている。中国飲料水業界トップ10社の雲南大山飲水公司、および八宝粥および蛋白飲料の大手である銀鷺集団の買収を完了したところである。
  ネスレは、このM&Aを成功させてきた。ネスレが他企業をM&Aをした後には、これら会社の管理職に継続してマネジメントを任せている。ネスレの責任者は、「このような方式は自らが要員を派遣して彼らを管理するよりも遥かに好ましい。我々がある会社を欲しがるのは、そこには成功した管理チームがあるからで、そうであるところ自らお金を払って買ったものを壊さなければならない理由があるだろうか?」と言う。このような方針によって多くのM&Aで成功してきたと評価されている。
  人民網日本語版は、今回のネスレのプレスリリースに対して、「中国監督部門の審査がネックに」という見出しで紹介している。2009年3月18日、商務部は、コカ・コーラ社が2008年9月18日に独占禁止法と国務院の「事業者集中の申告基準に関する規定」の定めに基づき提出していた匯源公司の買収計画を認容しない決定を下した。ネスレもコカ・コーラ社と同様の審査を受けなければならない。
  商務部は、どのような判断基準で審査をするのだろうか。数値化できない判断基準が依然として持ち込まれることになるのだろうか。
  (関連コラムに、第84回「外資による中国企業M&Aに警戒感」2007年2月28日、第123回「コカ・コーラ社による匯源公司の買収は
認められるか?」2008年10月8日、第134回「コカ・コーラによる匯源公司の買収否決」2009年3月25日、第138回「根強い民族ブランドに対する意識 ―アサヒビールによる青島ビール株の取得で」2009年5月27日、第142回「国務院反独占委が関連市場の判断基準を発布」2009年7月22日)

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