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Last Update:2011/9/28
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第195回 農民の地役権と土地開発問題の矛盾

(2011年9月28日)

  サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、2011年9月23日に広東省汕尾市の農村で地元政府の土地売却を巡って村民の抗議行動があったことを伝えた。
  事件とはどのようなもので、なぜ発生したのか。なかなか豊かになれない農民、その農民の地役権の侵害、地方政府による土地開発、政府幹部の腐敗という問題が背景にありそうだ。
  事件は、次のようなものであった。
  2011年9月21日午前9時頃、広東省汕尾市陸豊東海鎮烏坎村の60数名の村民が旧映画館に集まり、シュプレヒコールをあげ、横断幕を掲げて、土地問題に関する会合をもった。9時45分、一部の村民の煽動で約200人が集まり、合泰工業団地に向かって抗議行動のデモ行進を始めた。
  10時30分にデモ隊は二手に分かれ、一部は東海大通りの交通をストップさせ、一部は、陸豊市政府に向かい、市政府の正門を塞いだ。市政府指導者の会見により、12時40分に村民は自主的に解散した。
  午後1時30分頃、一部の農民が少数の挑発によって、再び集結し、3時に抗議行動のために烏坎村委員会に向かった。この間、一部の村民が激情し、村委員会の施設を破壊した。さらに約200人の村民が再び合泰工業団地に向かい、同工業団地の施工現場の施設を破壊した。
  通報を受けた公安部は、警察官を現場に派遣し、東海鎮共産党委員会と政府が鎮圧に努めた。しかし、一部の村民は、これを聞かず、女、老人、子供までも教唆して道路を封鎖し、さらに激情した一部の先導者は、村の牧畜場、レストラン、縫製工場を破壊した。
  9月22日1時頃、公安によって子供が殴り殺されたという噂がひろまり、一部の村民が地元の派出所に向かい、10数名の警官が負傷し、パトカー6台が破壊された。
  現在、事件を煽動した者4名が公安機関に拘束され、取り調べを受けているという。
  この事件は、なぜ起きたのか。中国のウェブサイトの記事やブログ等を見ると、以下のような問題がありそうである。第一に、(1)陸豊市は農業を中心とする比較的大きな市であり、2010年の高農業総生産額は大きく伸びているにもかかわらず、農民の1人当たり収入は3950元と広東省の平均収入の半分にも遠く及ばない。そうであるところ、第二に、(2)政府は土地を開発し、工業収入を増やす政策に転換したが、ここで農民に地役権があるにもかかわらず、土地を非常に低い補償金で収用し、(3)政府傘下のデベロッパーに転売し、(4)政府幹部が土地取引で私腹を肥やすということが行われていた。当該地区では、過去にも幹部の汚職事件、土地売買を巡る農民による抗議・破壊行動があったことが伝えられている。
  同様の事件は、全国のその他の農村でもありそうだ。農村の地役権と今日の農民の土地収用による不動産開発方式の経済発展との間の矛盾がある。

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