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(2011年11月22日)
賃金集団協議が広く実施されるようになっているが、一部では労働者も会社もこの協議を望まないという状況が見られるという。賃金集団協議の実施状況とその問題点とは、何なのであろうか。 賃金集団協議とは、労働者代表と企業代表が法により、企業内部の賃金分配制度、賃金分配方法、年間の平均賃金水準およびその調整幅、賞与・手当て・補助などの分配方法などの事項について、平等に交渉を行い、賃金契約を協議・決定することを規律するものである(「賃金集団協議試行弁法」(2000年11月8日公布、同日施行)。 労働組合が、労働者の適法な権利を保護する上での主要な手段であると認識されている。事実、この弁法の施行により、労働者の賃金が向上しているという統計がある。 例えば、北京の燕京ビール株式有限公司は、賃金集団協議により2011年10月時点の労働者の平均賃金は、対前年同期比1万元増加し、3.4万元になった(法制日報 2011年11月17日)。 しかし、一部の企業、とりわけ非公有制企業においては、労働者は「敢えて協議せず」、企業側も「協議したくない」という状況が見られるという。なぜだろうか。 第一に、労使双方に賃金集団協議に対する認識不足がある。とりわけ一部の企業は、賃金について、なぜ労働者と協議しなければならないのかという意識が強くある。内蒙古自治区における調査によると、賃金集団協議を知らないという労働者が30%おり、また、この協議が賃金アップに効果がないという者が22.1%、賃金アップの効果について知らないという者が31.4%あった。 第二に、賃金集団協議制定の手続きおよび内容が十分に規律されていないことがある。具体的には、企業内の労働組合の地位やその代表の選出手続きが規律されておらず、労働組合代表の企業の財務に関する知識がなく、企業の代表が労働組合委員長を兼務しているなどの問題がある。同じ内蒙古自治区における調査によると、労働組合が賃金決定に力を発揮していると思う労働者は、36.6%で、力を発揮していない、または、分からないという者が、それぞれ28.9%、33.3%もあった。 第三に、企業側としては、当然ながら人件費の高騰という問題がある。そこで、労資双方に矛盾を生じさせるということがある。 それでもなお、今後とも賃金集団協議は推進される。2011年初めに全国総工会は、2011〜2013年の賃金集団協議推進事業計画を策定した。この計画では、2013年末までに労働組合が設置されている企業の80%以上で賃金集団協議制度が確立されるようにするという。 2011年4月には、全国で初めて飲食業界で「武漢市飲食業賃金集団協議」が定められ、た。 全国総工会の責任者は、「賃金集団協議を実行することが難しい中小企業には、同業種、同地区の利益関係を同じくする労働者と連携して、業種性、地区性の賃金集団協議ができるようにすると述べていた。武漢市の飲食業界で、これが初めて規定されたということである。 「武漢市飲食業賃金集団協議」においては、この業界の最低賃金は、武漢市の最低賃金の130%にするなどの条項が定められた(人民日報 2011年11月16日)。 中国進出外資企業は、労働組合の設立をし、労資双方で良く協議をした上で、賃金集団協議の手続きおよび内容について規律をすることが肝要であると考える。
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