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LastupDate:2004/7/28
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コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第20回 中国人の誹謗は天性

(2004年7月28日執筆)



     最近、山東省青島市に所在する日系企業をめぐる事件が伝えられた(『朝日新聞』2004年7月10日)。 この日系企業は果樹栽培用の袋を生産する企業である。山東省莱陽市の農家で大規模な果樹被害が発生したところ、同日系企業の生産する袋が不良品であったからだと主張する農民と、これを否定する同社との間でトラブルが生じていた。そこで、同社の中国人従業員が7月5日に農民との話し合いに出かけたところ、農民に拘束され、会社には20万元(約260万円)の支払請求がされたという事件が発生したというものである。
  地元政府・警察幹部および同社と農民代表が10日に会見し、同社と農民側が12日に対応策を話し合うことを条件に10日夜、2人の従業員は解放されたという。
  中国では、原因も明らかでないところ、このような自力救済が許されるのだろうか。会談では、日系企業が何らかの支払いをせざるを得なくなるのではないだろうか。これが正しい解決法といえるだろうか。地元政府と警察幹部が調停人的立場に立ちそうだが、互いの譲歩を引き出すという手法が見えてきそうだ。というよりは強硬手段に訴えたほうの勝ちという結果にならないだろうかと懸念する。
  自力救済、まして身柄を拘束するなどは許されるべきではなく、当事者間で紛争の解決が不調の場合には、間違いなく法的手続きが踏まれなければならない問題である。法意識の欠如が如実に表された事例と見ることができようか。 もっとも、顧客のクレームに対しては、それが合理的なものであるか否かを問わず、企業であれば誠実に対応することが求められ、クレームが不合理であれば拒否するのは当然であろうが、この対応振りがどうであったのかは定かでない。日系企業のコミュニケーション能力に問題がなかったか否かということもあるかもしれないが、それでもなお、自力救済、身柄拘束は違法行為である。
  A・H・スミス(清代に30年にわたって中国に滞在したイギリス人宣教師)は、中国人の性格について「誹謗は天性」であるといっている。A・H・スミスは、「他人のために損害を蒙り、之を法に訴えても合法的に救済の道がないとき、……一団となって……押しかけ、もし抵抗でもすれば矢庭に激しい喧嘩をおっ始める。」(A・H・スミス著、白神徹訳『支那的性格』中央公論社、1940年、305頁)という。中国人は、一度激すると歯止めが利かなくなることがある。ある企業の一つの労使紛争をきっかけに、周辺企業全体でデモが一斉に始まるというような経験も周知のとおりであろう。
  法による支配を確かなものにしようとしている中国であれば、一般市民、農民に対する法学教育を普及することにより一層の尽力をすることが必要である。日本企業には、対中事業展開の中で生じているトラブルを分析・検討し、中国人の法意識を理解するとともに、トラブルの未然防止法、トラブル発生時の対処法の検討が求められる。



次号の更新は8月11日(水)ころを予定しています。

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