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(2011年12月14日)
人力資源・社会保障部は、2011年11月30日に「企業労働紛争の協議・調停に関する規定」(中国語は、「企業労働争議協商調解規定」と表記する。以下、「規定」という。)を採択、公布した。この規定は、2012年1月1日から施行される。 この規定は、企業において労働紛争が発生した場合に、協議および調停により紛争を解決することを規律し、労資関係の調和・安定を促すため、「労働紛争調停仲裁法」に基づき制定された(規定1条および2条)。 主な内容は、以下の通りである。 企業は、労資関係の調和・安定を促すため、具体的には法に基づき、従業員大会、従業員代表大会、業務公開などの民主的管理制度を実施し、集団協議・集団契約(労働協約)制度などを確立しなければならない(3条)。 企業は、労資双方の対話メカニズムにより、労働者が自らの利益を請求・表明する手立てを確立しなければならない(4条1項)。労働者は、企業が労働契約、集団契約を履行し、労働保障にかかわる法令および企業の就業規則等に問題があると求める場合には、企業労働紛争調停委員会(以下、「調停委員会」という。)に問題を提起することができ、調停委員会は、すみやかに状況を調査し、企業と協調して改善をするか、労働者に説明をしなければならない(4条2項)。 労働紛争が発生した場合には、当事者双方は、面談等の方式で協議をし、解決をすることができる(8条)。また、労働者は、企業所在地の労働組合(工会)に企業との協議に参与または協力をすることを要請することができ(9条1項)、または、その他の組織もしくは個人に協議に代表として参加を委託することができる(9条2項)。 当事者が、協議を望まず、または協議が不調であった場合には、企業の外の調停委員会または労働就業社会保障服務センターなどの組織に調停を申し立てるか、労働人事紛争仲裁委員会に仲裁を申し立てることができる(12条)。 調停委員会は、労働者代表と企業代表が対等の人数になるように組織し、労働者代表は労働組合執行部のメンバーまたは全労働者から選出されたものが担当し、企業代表は企業の責任者が指名し、調停委員会の主任は、労働組合執行部のメンバーまたは双方が推薦する者が担当する(15条)。 調停委員会の調停結果は、当事者双方を拘束し、当事者は調停内容を履行しなければならない(27条1項)。当事者は、調停合意が発効した日から15日内に共同で仲裁委員会に仲裁の申立てをすることができる。仲裁委員会は、これを受理した後、調停合意について審査し、「労働人事紛争仲裁事務処理規則」54条の規定に従って、手続きおよび内容の適法性と有効性について審査し、調停書を作成しなければならない(27条2項)。 さて、規定の主な内容は上述の通りである。この規定が、労働紛争調停仲裁法よりも詳細な規定になっているとは考えにくい。それでは、この規定には如何なる意義があると考えられるか。実務的には、余りなさそうである。 それでも、この規定によって労働紛争が発生した場合には、まずは企業内における協議・調停による紛争処理を優先させるべきであるという政府の考えが示されていると考えることはできよう。このため、企業は、この規定を有効に機能させるために調停委員会を設置することが求められるようになる。欧米企業に比べて、日本企業は企業内労働紛争調停委員会を設置していることが少ない。それ故に労働紛争が欧米企業よりも多いということが指摘できる。この規定の公布を機に、日本企業も積極的に企業内働紛争調停委員会の設置を検討するのが適当である。また、筆者が常に主張している通り、集団契約制度を設けることがますます肝要になる。
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