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(2012年1月11日)
中国は、第12次5カ年計画で、これまでの外需依存型経済から内需拡大による持続的成長を図ることを目標とする。この場合、(1)「外資導入の調整」と(2)「内需拡大」が重要な政策課題となる。経済成長は従来ほど高い目標を掲げず、むしろバランスのとれた経済を実現しようとする。 バランスのとれた経済ということでは、個人の所得を伸ばすことが必要である。中国の個人所得のGDPに占める割合は、42%程度しかない。先進資本主義国より数10%少ない水準である。個人所得を増やし、これを消費に回すことのできる経済・産業政策に転換することが求められる。 そこで、第一に「外資導入の調整」に関して、国家発展改革委員会と商務部は、2011年12月29日に「外商投資産業指導目録」(以下、「ガイドライン」という。)を発布した。 このガイドラインは、@対外開放をさらに拡大し、外資に対する規制を緩和し、A外資投資の方向性をハイエンド製造業、戦略的新興産業、現代サービス業への投資を奨励し、B中西部地区への投資を奨励するように調整した内容になっている。中国企業の国際競争力を強めようとするものである。 第二に、「内需拡大」に関して、商務部は、全国商務工作会議を開き、消費の拡大を2012年の主要任務とする決定をした。 家電下郷(農村における家電製品購入奨励政策)および買換えをスムーズにさせる政策を定める。2008年12月に始まった家電下郷政策であるが、2012年末に買換え時期が到来する。また消費刺激策として省エネ・環境保護を新たなモデルとして検討する。 消費を長期に成長させるメカニズムとして、流通体系を整備し、サービス業、インターネット取引の発展などを図ることも検討中である。 例えば、インターネット取引に関しては。取引額は、2011年上半期に3707億元と対前年同期に74%増であった。商務部は、「インターネット小売り管理条例」「第三者インターネット取引プラットフォーム管理弁法」など関連法の制定を研究中である。 以上の政策の実現に障害はないか。公平、公正な市場経済を実現できるか否かが問題である。 国務院発展研究センター研究員の呉敬蓮は、当面の中国の喫緊の課題は、国家資本主義ないし権貴資本主義(既得権益者が権力と財力に物をいわせる資本主義)を法治市場経済に転換することであると指摘している(呉敬蓮「当面中国改革最緊要的問題」中国改革、2011年第12期)。 呉敬蓮は、近年では「買官売官」がますます横行し、官僚の個人の意思が企業行為の成否を決定するようなこともあり、権力が市場から撤退しようとしないばかりか、むしろ市場の自由取引の抑圧やコントロールを強めていると指摘する。 今年の中国の経済政策の成否を判断しようとするとき、根源的な問題として、中国が、上述の問題に的確に対処することができるか否かを注視する必要がある。
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