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Last Update:2012/2/08
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第204回 「和諧家庭」の概念

(2012年2月08日)

  中国は、家庭を大切にする。どのような家庭が、理想的な家庭であるのか。
  全国婦人連合会は、この50年来、理想的な家庭像の基準を示し、毎年これに適った家庭を表彰してきた。
  2007年までは、基本的に「五好家庭」を提唱していた。何をもって「五好家庭」の基準とするかは、時代によって代わる。
  1982年の基準は、(1)政治思想が良く、良く働き、(3)家庭の和睦があり、老人を尊敬し、(3)子供を教育し、計画出産を守り、(4)慎み深く生活をし、勤勉に家庭を守り、(5)隣家と団結し、文明礼儀のある家庭であるとされていた。
  1996年に「五好文明家庭」と呼び方が変更された。この時の基準は、(1)国を愛し、法を守り、公益に尽くし、(2) しっかりと学習し、労働をし、(3)男女平等、老人を尊敬し、子供を愛し、(4)慎み深く生活をし、計画出産を守り、子供を育て、(5)勤勉倹約して家庭 を守り、環境を保護する家庭が良いとされた。この基準が、2009年まで援用されている。
  北京市婦人連合会は、2007年に「五好文明家庭」を「和諧家庭」へと呼び方を変更した。これが今、議論を巻き起こしている。なぜ、議論を巻き起こすことになったのかと言うと、「和諧家庭」の基準の適否に疑義があるからである。
  基準の中に以下のようなものがあるからである。例えば、しばしば旅行に行き、皆で集まって食事をし、買い物をし、蔵書は300冊以上あり、新聞を1紙以上購読しているのがいい、といった内容である。
  「和諧家庭」は、「嫌貧愛富」(貧困を嫌い、富裕を愛するのか。貧困層を蔑み、富裕層を敬うのか。)を意味するのかということである。
  このような批判を受けて、北京市婦人連合会は、基準には「衣、食、住、業」などの物質的なものだけでなく、「徳、情、意、智」などの精神的なものも含まれており、上記の批判の対象となった基準も絶対的なものではないと釈明している。
  最近、中国で流行っている歌に「実家をよく見舞おう」(常回家看看)がある。2012年の中央テレビの春節歓迎晩餐会に おいてもこの「常回家看看」が歌われた。中国で核家族化が進み、子供が実家に帰って老父母を見舞うことが極めて少なくなっている。「婚姻法」は、子供は老 父母を扶養する義務があると規定している。しかし、この扶養義務は、単に扶養費を支払えばいいというものではなく、精神的にも老父母を見舞い、関心を払 い、面倒を見ることを含む。「老年人権益保障条例」においては、精神的扶養義務が明文化された。
  ほとんど実家に帰ることのない子供を老父母が裁判所に訴えたという事案が複数ある。裁判所は、子供は老父母に対してお 金を送る等の物質的な扶養をするだけでは足りず、精神的な扶養をする義務があるとして、子供に3ヵ月に1回は必ず実家に帰り、老父母を見舞わなければなら ないという判決を下している。
  最近の中国の「嫌貧愛富」に警鐘が鳴らされている。

  「実家をよく見舞おう」  

                   暇を見つけて 時間を見つけて 孫を連れて実家を見舞おう
                   笑顔を携え、祝意をもって、伴侶を連れて実家を見舞おう
                   お母さんのおしゃべりがとまらない お父さんがご飯を作ってくれた
                   生活の悩みをお母さんに打ち明け 仕事の悩みをお父さんに相談しよう
                   実家を見舞おう できるだけたくさん 
                   箸を洗って、食器を洗って お母さんの食事の後片付けを手伝おう
                   老父母は子供が実家のために尽くしてくれることを期待はしない
                   人の一生は苦労が多い それでも団欒があればいい
                   実家を見舞おう できるだけたくさん
                   お父さんの肩を叩いて、肩を揉んで 
                   老父母は子供が実家のために尽くしてくれることを期待はしない
                   人の一生は悩みが多い それでも安らかならいい

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