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(2012年2月22日)
中国は、現在、食料生産自給率100%をほぼ維持している。しかし、人口増および水資源の枯渇などによって自給率100%を維持し続けることは困難になりつつある。そこで、第12次5カ年計画では、食料自給率100%を維持することが重要な計画目標として掲げられた。 自国だけで食料自給率100%維持が困難になることを見越して、海外で農地を買収する動きも出てきている。 所得水準の向上、健康志向の向上などに伴って副食品の重要性が増すところ、主食だけでなく、副食品の生産拡大も重要課題となりつつある。副食品の外国からの輸入が増えている。 こうした中、最近、次のような事件があった。 ニュージーランド最高裁判所が、2012年2月に同国政府に中国企業によるニュージーランド農場の買収案件を再審査するように命じる裁定を言い渡したというものである。 ニュージーランドで16カ所、合計面積1万9501ヘクタールの牧場を経営する企業が破産し、この売却を計画していたところ、上海鵬欣集団有限公司の子会社「ミルク・ニュージーランド・ホールディング」が2億ニュージーランド・ドルを投資して、土地およびその他資産を買い付け、農場のグレードアップを図るという申し出をした。これは、買収提案の中で最も好条件の提示であった。そこで、企業間の買収契約に関しては、当事者で合意が成立した。 しかし、これに対して買収の競争者であった企業に社員である1人の農民とマオリ族が当該計画の不許可をニュージーランド高等裁判所に申立て、同裁判所はこの申立てを受理した。ところが、高等裁判所の裁定が下される前に、2012年になってニュージーランド政府がこの買収案件を認可した。 かかる状況において、この度、最高裁判所が、ニュージーランド政府に対して中国企業によるニュージーランド農場の買収案件を再審査するように命じる裁定を言い渡したものである。 原告は、最高裁判所の裁定に対して、ニュージーランドの経済利益に適うものであるとコメントしている。一方の中国は、今回の裁定が下されたことについて、不満を表明している。ニュージーランドにとって、中国はオーストラリアに次ぐ輸出相手国である。また、中国が最初に自由貿易協定を締結した最初の先進資本主義国である。そうであるところ、今回の裁定であるので、不満が高じているようだ。 中国は、「走出去(海外投資)」戦略も第12次5カ年計画に繰り入れた。このとき、海外投資や企業買収を成功させるためには、投資相手国の国家安全審査、二国間投資保護協定、会社法などの法的リスクについて十分に研究する必要がある。また、政治、文化、道徳観の違いを認識し、企業としての誠実な経営を心掛けることに必要になる。
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