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Last Update:2012/3/21
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第207回 中国作家団体がアップルに宣戦布告

(2012年3月21日)

  2011年の知財関係の訴訟は2010年に比べて37.7%増で6万6000件あった(China Daily 2011年3月12日)。中でも著作権侵害に関するものが多い。
  世界消費者権利の日の3月15日に中国作家権利保護連盟(以下、「作家連盟」という。)は、アップルを中国の法院に提訴したことを発表した。
  作家連盟は、アップルが同社の端末向けソフト配信サイトの「app store(アップルストア)」において、作家連盟に加入している中国人作家の小説などの海賊版を無料でダウンロードさせ、または販売していることは、著作権侵害にあたると主張している。アップルは、作家連盟の指摘を受けて、海賊版の小説はapp storeから削除している。しかし、作家連盟としては、これだけでは不十分であるということである。
  作家連盟は、アップルに作家に対する謝罪と損害賠償の請求を裁判外でしていたが、アップルがこれに応じなかったので、法院への提訴をしたという。作家連盟によると、法院は訴えを受理しており、2012年下半期に開廷審理が行われるだろうということである。
  中国国内でiPhoneやiPadを購入しているユーザーは、3000万人にのぼる。アップルは、app storeでソフトも販売しているが、この有料ソフトについてはソフト開発社がダウンロードされた収入の7割を取り、アップルが3割を取るという契約になっている。ところが、このソフトも本来のソフト開発者の海賊版であることが多いという。
  2011年、iPadの商標を巡って深圳唯冠科技が、当該商標は同社が保有しているとして、アップル社の製品販売差し止め訴訟を深圳市中級人民法院に起こしたのに続き、アップルに宣戦布告がなされた。
  作家連盟の訴えは認容されるか。
  アップルは、作家連盟からの通知を受けた後に速やかに海賊版の小説をapp storeから削除したので問題ないと主張している。これは、米国の著作権法にも規定されているセーフハーバー条項(中国語で「避風港原則」という。)のnotice & take down(ノーティス・アンド・テイクダウン)条項にも見られるオンライン・サービス・プロバイダーの免責条項である。
  中国でも2006年7月1日施行の「情報ネットワーク伝達保護条例」(信息網絡伝播権保護条例)22条にプロバイダーの免責条項が規定されている。これによると、サービス対象が提供した著作物、実演、録音・録画製品の権利侵害を知らないか、または知り得べき合理的な理由がない場合(3号)、製品から経済的利益を得ていない場合(4号)、権利者の通知を受領した後、削除した場合(5号)などの事由があるときには免責されるとされている。
  また、2011年12月16日に発布された最高人民法院の「知的財産権の裁判職能作用を十分に発揮し、社会主義文化の大いなる発展及び繁栄を推進し、並びに経済の自主的及び調和的発展を促進するための若干問題に関する意見」でもnotice & take down条項が適用されることを規定している。
  ただ、争いの詳細は紹介されていないので、上述の要件が直ちに適用され、アップルは免責されると単純にいえるものであるか否かは、現時点では判然としない。今後、同様の訴訟が増えることが予想される。

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