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(2012年4月11日)
商務部は、2012年4月2日に北京市王府井百貨店前の広場で全国消費促進月間活動の開幕式を行った。商務部国際貿易経済合作研 究院が4月1日に「2012年消費市場発展報告」を発布していたが、第12次5カ年計画期(以下、「12・5計画」という。)において消費を拡大すること が、投資および輸出を喚起した経済成長モデルを確立する上で、内需拡大が重要な役割を担うという認識である。 中国の億万長者の数は、今後5年ないし10年のうちに米国を超えると予測される。しかし、内需を拡大するには中間所得 層を拡充することが重要である。2007年には0.37であったジニ係数が、2011年には0.52にまで高くなっている。これは所得格差が開いているこ との証左である。上位1%の高所得者が中国の富の41.4%を独占しているという世銀のレポートがある。 これでは中国全体の経済成長を維持するのには適さない。中国の統計によると2011年の最終消費のGDPに対する貢献度はわずか51.6%しかなく、米国の70.53%、世界平均の76.56%より遥かに低い。 都市化が進展しているが、都市住民の一人当たり消費支出は農村の3.1倍である。12・5計画末までに都市化率は2009年の46.6%から51.5%になり、2030年には65%に達すると見込まれている。 2015年に15歳から60歳の人口層が9億人となり、過去最も多くなる。人口ボーナスによる消費がピークになる時と考 えられている。この時、「80後」(1980年代生まれの世代)、「90後」(1990年代生まれの世代)が消費の主力軍になる。 ただ、現状の経済政策のままで推移していていいのかについては疑問がある。中国は、低廉かつ豊富な労働力を活用した低 コスト生産を魅力として、企業を誘致することによって経済発展を遂げてきた。外国企業だけでなく内資企業もそうであり、とりわけ民営企業の起業家はこの恩 恵を受けてきたと言える。 このままの状況を維持していると、中間所得層が十分に育たない可能性がある。このために毎年14〜15%の賃上げが行 われている。ただ、このような方式だけにより中間所得層を増やすことには限界もありそうである。富を独裁している起業家は、自らの富の一層の蓄積のみに熱 心で、従業員の所得向上には無関心または反対であるといわれる。 そこで考えられるのが、従業員持株制度である。このモデルとなりそうなのが華為技術有限公司である。同社の創業者は、 発行済株式の1.42%しか保有していない。残りは従業員が保有している。従業員持株制度により、従業員の資産形成が図られ、従業員の経営参加意識を高め ることも期待できる。今後、広く推奨される制度になると考える。
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