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Last Update:2012/5/23
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第212回 鉄道事業に民間資本を導入、行政独占・独占企業に厳しく

(2012年5月23日)

  鉄道部は、2012年5月に「民間資本が鉄道に投資することを奨励し、促進することに関する実施意見」を発布した。これは、国務院の「民間投資の健全な発展を奨励し、促進することに関する若干の意見」に基づき、鉄道分野においてもこの政策を実行する方針を明確に示したものである。
  この実施意見は、(1)旅客、貨物の全国主要幹線、地方路線およびその関連施設などの施工、設計、および維持、(2)物流など鉄道関連サービス業務および施設の経営などに関して、民間企業が資本参入や資産買収などの方式で経営に参画し、鉄道事業・企業の改編を促すことを主たる目的として定められた。さらに、海外における同様業務の受注も狙っている。
  さらに、この実施意見では、鉄道の投融資体制を改革し、鉄道事業に対する行政許認可を規律しつつも減少させ、政府の情報公開を推進することなどが表明されている。
  これにより、鉄道の経営管理体制改革を促し、民間企業が当該事業に参入することを容易にし、企業の公平な競争を促進、発展させることを目指す。
  2011年7月23日夜の温州市における高速鉄道事故が発生した。この時、事故処理をめぐって、(1)鉄道体制の改革の不在、(2)情報公開の質の悪さ、(3)責任の所在の不明確さなどが問題となった。
  とりわけ、2008年に政府機関の機構改革が行われたものの、鉄道部だけが「政企不分」(行政と企業の一体管理)が維持された。当時、市場における自由競争が、ひいては経済の繁栄をもたらすという理論に対して、鉄道は建設工事の任務が非常に重要であるので、改革対象から外すという特例措置が認められたからである。
  温州市における高速鉄道事故から1年弱にして、鉄道部にも行政改革のメスが入れられるようになったと評価できるであろうか。今後の実行状況を見守ることになるだろう。
  最高人民法院は、このほど「独占行為から生じた民事紛争事案を審理する際の適用法の若干の問題に関する規定」を発布した。この規定は、6月1日から施行される。
  この規定の最大の特徴は、独占行為から生じた民事紛争事案に関して、自然人、法人またはその他の組織は、その損害賠償請求を民事訴訟のかたちで人民法院に直接に提訴することができるとしたことにある。すなわち、従来の行政訴訟前置主義を排除したことである。企業による独占状態があるか否かは、行政訴訟で処理する場合には、原告に挙証責任が重くのしかかっていた。原告の挙証責任も軽減されることになりそうである。
  2008年8月1日に独占禁止法が施行されてから2011年末までに、全国の法院が受理した民事事件は61件であった。交通、医薬、食品、家電、情報通信と行った分野の紛争が多い。
  温州市における高速鉄道事故の時にこの最高人民法院の規定が存在していたら、どうなったのだろうか。

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